Ozon から古書が二冊届く。
ひとつは "Ю. М. Лотман и тартуско-московская семиотическая школа.", М.: "Гнозис", 1994 (『Ю. ロートマンとタルトゥー=モスクワ記号学派』). Ю. ロートマンの死去を受けて出版された記念論文集である。 ソヴィエト構造記号学論文の金字塔ともいえる "Лекции по структуральной поэтике", 1964. (『構造詩学講義』) その他が収録されている。Ю. ロートマンは世界的に有名な芸術記号学者である。私にとっては、プーシキンと文学史研究の一大権威である。彼が 1993 年に亡くなったときは New York Times や Le Monde などがその訃報を大きく報じたのに対し、我が国では日経だか読売だか一誌のみが数行の記事を掲載しただけだったという、日本人の文化的アンテナの低さを嘆くエッセイを読んだことがある。ま、日本では記号学というとフランス物が消化不良のまま持ち上げられているのだから仕方ないと思う。ところでこの本、「無断で輸出を禁ずる」との注意書きがある。書籍にこんなこと書くかなあ。いずれにせよ知の流出にはロシアは昔ながらにセンシティブなのだろうか。
いまひとつは Е. А. Баратынский, "Стихотворения и Поэмы", М.: "НАУКА", 1983 (Е. バラティンスキイ, 『詩集と叙事詩』). バラティンスキイはプーシキンに次ぐといってもよい十九世紀前半のロシアの詩人で、二十世紀になって再評価された逸材である。プーシキンも『エヴゲーニイ・オネーギン』などで一度ならず言及し、高く評価していた。本書はソヴィエト科学アカデミー『文学遺産』シリーズの一冊で、日本でいえば差詰め岩波古典文学大系本のような権威ある版であって、私はこの作品集をずっと探し続けていたのであった。

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