自社製 RDBMS チューニング,半蔵門・神保町

|

とある顧客でシステム性能問題が沸騰していて,ここ三ヶ月ほど極めて危機的な状況にある。業務単体性能の取得,トレースの解析,高トラフィック試験などをやって来た。その過程でデータベースのインデックス設定,ロギング設定の対策をやった。改善提案のうち,あとはアプリケーション・オブジェクト (このシステムはいまだに CORBA ベースなんである) の並列処理とデータベース・ソフトのキャッシュ・チューニングとを残すところとなった。

不幸はたかってやって来る。別顧客のシステム基本設計がいま山場である。また別の顧客システムで障害が発生する。てな具合で,今回も担当主任と担当者の首が回らなくなって来た。追加の仕事が湧いても人はおらず。打つ弾はいつも同じ。いくらでも人を雇いたいが,そのための金もなし。ハードやソフト開発には金を出してもシステム・エンジニアには出し渋る客が多いのだ。企業というのは本来的に人に冷たいわけである。だからと言って「あんた,性能・信頼性設計支援費用見積りを断ったよね。人的資源に対して金をくれないそんなあんたのいまさらのわがままは無視!」とも言えない。「性能・信頼性はメーカーの責任だ」と撥ね付けられる。業者は弱いのだ。

こうしてシステム・エンジニア,プログラマはご飯を食べさせてもらえずに仕事ばかりが増えて,客からは責めまくられ,社内からは吹き出す赤字で突き上げを喰らい,絶体絶命に追い込まれてゆく。体を壊すだけでなく,心を病んでしまう者も出て来るわけである。世のコンピュータ・エンジニアの皆さん,自分ひとりだけと思い詰めないでプワーッと,暢気にゆきましょう!

それはさておき,私は一応プロジェクト・マネージャなので,基本的には作業をグリップせず担当者に任せ,工程管理と懸案事項・リスク管理に徹することにしている。しかし,ここに来て担当者のアブれた作業を外注するだけでは回せなくなり,顧客から責められている性能問題に自分の手を染めることになった。それ自体,私のマネージメント能力を疑われてもしようがないのだが。私はプライベートでは misima,コンコーダンスプログラム, LaTeX マクロ・スタイルを拵えたりしているのに,本業ではまったくシステムに触らないのである。データベースのチューニング,メモリ設計なんて何年ぶりか。

Windows パフォーマンスモニタで CPU,メモリ,ディスクリソースを調査した。どうもディスクネックで,CPU,メモリは余裕しゃくしゃく。そこでデータベースの高頻度データをメモリ・キャッシュしてディスクアクセス削減により高速化を図ることにした。データベース・ソフトは自社製 RDBMS である。商用システムでは Oracle 全盛のこの時代,国産の RDBMS と聞いて小馬鹿にして吹き出すヤツがいる。私にはむしろ,他人の製品を買って来て,アプリを付け加えることでしか商売のできないほうが哀れである。最後まで責任をもってサポートできるこの RDBMS に,私は担当顧客の要求仕様をいくつも注入して来たし,たいへんな愛着がある。本製品の統計情報機能を利用してキャッシュ・ヒット率を調査し,テーブル・エリアの利用状況をもとにチューニング案を策定した。知り合いの RDBMS 設計者とレビューし,顧客提案資料を纏めた。Oracle を使っているいったい誰がその設計者と一体になってチューニングを施すことができようか。そういう点で,私はなにからなにまで自社で面倒を見ることの出来るこの RDBMS 製品に,メーカーとしての誇りをもっている。

今日午後,麹町にある顧客先にチューニング案の説明に赴いた。顧客ビルは,地下鉄半蔵門駅を出て国立劇場の方に向かって徒歩数分,英国大使館,皇居のすぐ側の一等地にある。さすが日本を代表する電機メーカーの情報システム部門。いつもなら子分に一任して行かせるのだが,今回は若い営業担当者と私の二人だけであった。キャッシュ・チューニングの考え方,変更パラメータ,メモリマップトファイルの注意事項 (Windows は,巨大なメモリファイルシステムを使った運用で軽率なオペレーションを行うと,NTFS キャッシュのストアでディスクを占有し,オンライン・システムがほぼスローダウンしてしまうことがある),Windows プロセス・メモリ・ストレージ設計等々について,時に冷や冷やしながら,説明した。チューニング試験日程の検討を依頼した。久しぶりに手を動かした資料をもとに,顧客を相手に珍しくテクニカルな話題でしゃべりまくって疲れ果ててしまった。

会議資料の準備でお午を抜かしてしまったので,打合せの終わった午後 6 時には,腹がペコペコだった。ちょっとした開放感も手伝って,神保町に出ることにした。地下鉄で半蔵門からわずかに二駅である。中古レコード屋で,セルジュ・チェリビダッケがミュンヘン・フィルを指揮したモーツァルト『レクイエム』ライブ録音と,エリオット・ガーディナーが珍しくウィーン・フィルを振ったブルックナー『ミサ曲ニ短調・モテット集』の二枚,輸入盤 CD を購入。夕食を摂り,神保町のいつも行く喫茶店で,コーヒーを飲みつつ,宮部みゆき『火車』を堪能した。クレジット・カードの支払いに端を発してサラ金地獄に陥った孤独な若い女性。彼女を殺害して成り済ます女性。現代の豊かさへの幻影と社会的陥穽。悲しい物語。日テレの『相棒』でも同じような話があったけど。帰りの電車,アコムのすぐ横に自己破産申告相談を承る弁護士事務所の広告。やり切れない。

Celibidache Plays Mozart's Requiem
S. Celibidache(Dir)
Münchner Philharmoniker
EMI Classics (2004-10-04)
Bruckner: Masse Nr. 1 d-moll für Soli, Chor und Orchester; 5 Motetten.
J. E. Gardiner(Dir)
The Monteverdi Choir
Wiener Philharmoniker
A Universal Music Company (2001-02-25)

Moon Calendar

Profile

ISAO YASUDA。システムエンジニア。神奈川県在住。昭和 30 年代を懐かしむオヤジ。ロシアに興味があります。
[more], [About our site]

Notice

この文書はフィクションであり,実在する個人,団体等とは一切関係ありません。

R-18 指定サイトです。そのうち「18 歳以上ですか」の認証を入れる予定です。

文書の記述内容は無保証です。不適切な表現があればコメントにてご指摘ください。

コメント,トラックバックは,現在,運用を停止しています。ご意見等ありましたら isao@yasuda.homeip.net 宛電子メールにてお願いします。

Links

About this entry

Written by isao at 2008年12月12日 23:07.

Previous: 進路指導

Next: 年の瀬。暗い,暗い

Recent Entries in Main Index.
All Entries in Archive Index.

February 2012

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29      
Powered by Movable Type 4.1 blog counter