結婚式・多摩川散歩

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会社の部下の結婚式に出席した。バブル崩壊以降,新入社員が毎年自分の課に配属されるなんてまず望めないようになり,社員の結婚式に呼ばれるのも稀になった。なのに一方で売れ残っているベテランもかなりある。結婚する奴がいないのである。仕事で忙しいからか,相手がいないからか,結婚願望が少ないからか,総じて「結婚」ということばが職場でもめったに聞かれなくなった。少子化の理由はいろいろあるのだろうが,私自身の実感として,婚姻そのものの数が減り,あるいは婚期が遅くなっていることもそのひとつかも知れない。

場所は横浜元町にある「山手迎賓館」。JR 根岸線石川町駅で降りて,元町の瀟酒な商店街をぶらぶら歩いて,横浜高速鉄道みなとみらい線元町・中華街駅すぐ側,港の見える丘公園に隣接した目的地に着いた。式場は白亜のお洒落な建物であった。この日,予報では台風が心配されたが,雲ひとつない快晴に恵まれ,若者の新しい人生の門出に相応しい日和となった。

人生に一度,結婚披露宴のときだけは,誰もが美男・美女,幼いころからやんちゃ・おてんばだが心優しいしっかり者,学校時代では秀才・才媛としてもてはやされ,いまや押しも押されぬ組織の中心人物,ということになっている。とはいえ,実際に,新郎は一流大学の工学部大学院を修了し,私の部下のなかでもとくに仕事ができる。なかなかのイケメンであり,顧客の女性社員からも人気がある。彼が伴侶に選んだ女性も佳人なり。そういうわけで世の披露宴の世辞が空虚に響かない。今日の花婿・花嫁は青い空と白い建物に映える,眩しいくらいの美男・美女であった。「僕にコキ使われて家に帰られなくても勘弁ね!」と事前の詫び言を新婦に対して口にする私は,気の効かない上司だということかも。トラブルの最中に結婚式を挙げ新婚旅行から帰って出社したそのときから一週間帰宅できなかったのが懐かしく思い出された。おめでとう。おめでとう。

豪華なフレンチ,おっと感心するくらいの美味なワイン,よりどりみどりのスィーツをいただいた。引き出物が橘吉製和風角皿セットだとわかって,妻がカンゲキ。「新郎・新婦の写真入り絵皿だったらどうしようかと思ってたのよ」。

* * *

けふは妻とお散歩。「東京の古い町並み散策」なんて金がかかって嫌,ご近所ですまそうということに。多摩川沿いを進んで等々力緑地に至る経路だった。

自宅のすぐ近くにあるお地蔵さまの祠の裏手に,彼岸花が咲いていた。この鮮やかな緋色を不吉だと感じるのは,ただ墓場に咲くイメージと結びついているがゆえに過ぎない。でもそのおかげで詩にもなるのである。

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平間駅から多摩川・ガス橋の袂に出て,ここから多摩川沿いの堤を歩く。対岸の下丸子にキヤノンのビルが見える。少し歩いた向河原,武蔵小杉あたりからは日本電気の工場ビルが見える。このあたりはメーカーの工場が多いのである。昔は煤煙で鼻に煤がたまったと先輩から話を聞いたことがあるが,いまはそんなことはない。

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田園調布,多摩川園が望まれる中原街道あたりでは,何面もある河川敷野球グラウンドで少年たちが野球の練習をしていた。気兼ねなくトランペット,サクソフォーンの練習をする若者たちがいた。バーベキューパーティを楽しむ人々。これまで何度かこの河川敷で,息子のクラブのバーベキュー大会があった。土地勘のまるでない妻は「あ,ここだったんだ。こんな近くだったっけ」と感心していた。

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小杉陣屋町というところで多摩川沿いを離れ,等々力緑地に向かう。途中,「川崎バナナ」なる面白い名前の町工場を見つけた。

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今日は J リーグのサッカー試合があるわけでもないので,競技場付近は閑散としていた。秋分日に開催される「スーパー陸上」の準備が粛々と進んでいた。

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競技場のすぐ横の日本庭園に入った。ここは池一面を蓮が覆い,その季節には壮観らしい。その向こう側のより大きな池の奥に真白の鷺の群れがいた。ベンチで一休みしていると,黒猫が一匹やって来た。すぐ横のベンチにはホームレスの男が寝そべっていた。私は蚊に何カ所も喰われてしまった。

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市民ミュージアム前にペットボトルによるオブジェがあった。アリーナでは剣道の大会が行われていたようである。その側を通って等々力緑地入口からバスで帰宅する。バス停でクラブ活動の高校生 3 人がだべっていた。「お,今日『ブザービート』最終回じゃんか。それまで家に帰れるかなー」。

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約一時間半,十キロちかく歩いたのではないだろうか。

帰宅してインスタントコーヒーを飲んでいたら,友達と遊びにいった息子から電話。「あ,お父さん? 『ブザービート』録画予約してあるか知らない?」— 妻が横からしてあると言うので,「してあるみたいよ。でも,そんなことどーでもいーじゃねーか」。この『ブザービート』というテレビドラマを子供たちは熱心に観ている。バス停での一コマからしても高校生,ひいては若者全般に支持されているようである。だけど,私には苦手のドラマである。これは奥手の美男・美女が彼らに積極果敢にアプローチする男女を振り切って結ばれる恋愛ものである。息子は私の皮肉な反応を茶化すかのように「スミマセノトーサン」とあのソフトバンク CM の黒人を真似して電話を切った。おまいらテレビ観過ぎ。
 


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ISAO YASUDA。システムエンジニア。神奈川県在住。昭和 30 年代を懐かしむオヤジ。ロシアに興味があります。
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Written by isao at 2009年9月21日 18:51.

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