2010年11月Archives

今日,妻と二人で上野・東京藝術大学奏楽堂でコンサートを聴いて来た。この演奏会は,娘とシャガール展に藝大美術館を訪れたとき,目を付けたのだった。全席自由席ということで開場時刻の少し前に入口に並んだ。奏楽堂ホールの立派さに驚愕した。よい席がとれた。今日の演奏会には,たくさんの視覚障害者の方たちが招待されていて,演奏に先立って作品概要や演奏の特徴などの説明がなされた。点字による資料も配られているようだった。

演目は,武満徹作曲『十一月の霧と菊の彼方から』,『妖精の距離』,『揺れる鏡の夜明け』,レスピーギ作曲『夕暮 Il Tramonto』,プーランク作曲『ヴァイオリン・ソナタ』,シェーンベルク作曲『弦楽六重奏曲 — 浄夜』。清水高師,ピエール・アモワイヤル,漆原朝子(Vln),川崎和憲,大野かおる(Vla),山崎伸子(Vlc)ほか総勢 16 名の出演者が集うものだった。室内楽が好きなクラシックファンには,出演者の名を見て演奏会の質の確かさがわかると思う。

『音楽に息づく詩』という題名の通り,演奏の合間に,大岡信やリヒャルト・デーメルの詩が朗読された。武満のヴァイオリン曲集とシェーンベルクの弦楽六重奏曲に私はいたく感銘を受けた。『浄夜』は弦楽オーケストラ版のほうが人気が高いけれども,音像のシャープさ,音響の緊密さで,私はやっぱりオリジナルの弦楽六重奏版が好みである。2000 円のチケットでこういう渋いコンサートが聴けるなら,いくらでも足を運びたくなる。中途半端な外タレなんかより日本人演奏家のほうが,チケット代が安価であるにもかかわらず,遥かに質の高い演奏を聴かせてくれる。妻はレスピーギの室内歌曲が気に入ったようだった。私はマグダレーナ・コジェナーのメゾ・ソプラノでこの曲の CD を持っていた。iPod にでも入れて上げよう。

小春日和とも言える今日,上野公園は銀杏が色づいて綺麗だった。藝大のキャンパス内,奏楽堂への小道にも落ち葉が一面に散り敷いて,銀杏の匂いが鼻を突いた。

「対極にある星と星の緊張が
この一本の木を躍らせるのよ」
十一月の霧と菊の彼方から来た
女が言ふ。
大岡信
 

武満徹の上記ヴァイオリン曲の極上の演奏 CD はこれ。今日出演したヴァイオリニスト・清水高師が同じく『十一月の...』を演奏している。アルディッティ弦楽四重奏団による『A Way A Lone』も出色の演奏である。

武満徹 室内楽作品集成1

 
A. アルディッティ,D. アルバーマン,清水高師 (Vln)
L. アンドラーデ (Vla)
R. デ・サラム,上村昇一 (Vlc)
藤井一興,小賀野久美 (Pf)
フォンテック (2005-04-21)
 

レスピーギの『夕暮』を収録している数少ない録音。マグダレーナ・コジェナーのメゾ・ソプラノで。

ラヴェル:マダガスカル島民の歌
M. コジェナー(MS)
ユニバーサル ミュージック クラシック (2004-05-26)
 

シェーンベルクの『浄夜』弦楽六重奏版については,巌本真理弦楽四重奏団の遺産が最高の名演だと私は思っている。この CD については前にも言及したような気がするが,改めてリンクを付けておく。TOWER RECORDS による企画盤なので,もう入手が簡単ではないかも知れない。

Ich fühle luft von anderem planeten,...
私はほかの遊星からの大気を感じる...
Stefan George, »Entrückung«


シェーンベルク:浄夜&弦楽四重奏曲第2番
巌本真理弦楽四重奏団: 巌本真理 (Vln-1), 友田啓明 (Vln-2), 菅沼準二 (Vla), 黒沼俊夫 (Vlc)
江戸純子 (Vla-2), 藤田隆雄 (Vlc-2), 長野羊奈子 (Sop)
TOWER RECORDS EMI CLASSIC (2009-03-04)

 

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CNN 尖閣ビデオ破棄,三島自決 40 年

CNN,SDカード配達認める…『廃棄した』』(讀賣配信),『CNNに無視され尖閣ビデオ『ユーチューブ』に投稿』(スポーツ報知配信)をみた。匿名男がズルしてアップした尖閣諸島沖中国漁船衝突の暴露動画について,私はこれを「国辱」だとさえ思っている。sengoku38 は日本代表たる政府を世界の笑者にしたという意味で,心情右翼である私からすれば「国賊」である。彼を英雄視しているバカ(多分,普通の会社員ではないんだろう)が多いけれども,海保をクビになった彼を雇おうとする企業はないはずである。何故なら,まともな組織人ならば「裏切り者」だとわかっている人物を信用しないからである。

「声明や広報担当の説明によると,SDカードが入った封筒には差出人名が書かれておらず,データの内容も明記されていなかった。このため,同社は安全性が明確でないと判断し,データを読み込まずに廃棄したという」(讀賣)。sengoku38 さん,やっぱりここでもご丁寧に,差出人も何も書かずに CNN に映像データを送りつけたんですね,海保をクビになるのを怖れて。この差出人不明のいかがわしいビデオの取扱いについて,CNN のような態度こそが「健全なる社会」のご意見番としてのマスコミに相応しいのである。匿名野郎は門前払いに限る。組織への裏切りに基づくズル行為は,たとえニュース・バリューが高かろうと低かろうと相手にしない,という立ち位置を象徴している。「警備上の指針に従って廃棄した」という理由はズルを認めないという一貫した姿勢なのである。この記事を読んで,「不正」に対する感覚では,やはり米国が日本より一枚も二枚も上を行く「先進国」であることを私は痛感した。

CNN の行動様式は,「勇気ある行動」などと囃し立てるどこかの国の「民度の高い」報道とは天地の懸隔がある。これに対して,この sengoku38 のおかげでわが日本政府が世界への恥晒しになっていることがわからない日本人が多過ぎるように思う。スポーツ報知(三流新聞社だから致し方ないんだけど)の記事なぞは「放送に使用していれば大スクープ映像となったことは間違いない。[ ... ] 映像が放映されていれば,世界的に波紋を広げたことは間違いなさそうだ」なんて書いている。こういう勘違いを堂々と書くのが日本のマスコミなんである。海外のメディア界の人たち(良識ある大人)は,だいたい想像がついたこの映像が匿名ズル男に晒されたこと自体に対してはただ失笑するだけで,一方「大スクープ」になるというスポーツ報知の判断にはただ呆れるだけだろう。マッカーサーは日本人を「12 歳の子供」と評したらしい。その通りである。
 

* * *

今日の朝日新聞夕刊社会面に「三島さんを恨んではいなかった」という記事が載っていた。三島由紀夫が陸自市ヶ谷駐屯地で割腹自殺してから,今日 11 月 25 日で 40 年。ということで,そのとき人質になった総監の長男が胸中を語ったというものである。「恨んではいなかった」というのは人質にされた上,この事件の責任を問われた(駐屯地でこんな事件が起こるなんざ軍隊としては恥晒しともいえるわけで,この総監がクビになったのは当然)ことに由来する。

三島由紀夫はなによりも我が日本文学史上の輝ける才能である。私は高校生のころ『仮面の告白』,『金閣寺』を読んで一時は三島の虜になってしまった(『憂国』において,自決を決意した夫婦の前夜のセックス描写を読んだ妻は,「謙虚な腹」という表現などに,失笑すべきエロティシズムの印象しか覚えなかったらしい。どうも妻と私とは文学の趣味が合いませんが,この意見はもっともなところがあります。三島の美学には,少し斜めから見ると笑いを催すものがある)。いまも戦後の日本文学者の名を挙げようとすれば,谷崎,川端,三島,開高,大江,安部,... と真っ先に出て来る作家である(こう考えるにつけても,1930 年代よりあとに生まれた世代のだらしなさといったらない)。しかし一方で,この割腹自殺事件など,彼のプライベートというか政治信条には,ただの「世間知らずのお坊ちゃん」的独善に囚われた人物像しか思い描くことができない。彼の文学的成果とはなんの関係もない事故としか思われない。

この割腹自殺ゆえ右翼にとって三島は神になった。私はただ鼻で嗤うだけである。自決を前にぶった三島の演説に,「なにワケのわからんことを言ってるんだ」と笑いながらヤジを飛ばす自衛官がいたのを,私はニュース映像で知っている。これこそ地を這う生活を強いられた社会人のものの見方というものである。当時,三島の「盾の会」を皮肉に茶化したオカモト・コンドームの CM があった(これについてはここでも書いた)のも頷けるのである。

朝日の記事は次のように結ばれていた:「最近の官房長官の『暴力装置発言』には絶句したが,『軍事集団が大手を振って歩く時代』は来てほしくないと願う」。『軍事集団が大手を振って歩く時代』を率先して囃し立てたのはどこの誰か,この記者は知っているのやら,知らんぷりを決め込んでいるのやら。ま,こんなことは三島とは関係ない。それにしても,三島由紀夫の文学遺産はやっぱり私の心の中に生きているんである。
 


朝鮮半島で交戦・柳田法相辞任

昨日の夜,『なでしこジャパン,アジア大会で初優勝』というニュースにカンゲキしていたら,今日夕方,さきほど,『北が砲撃,韓国兵士2人死亡』なるニュースが飛び込んで来て,いよいよヤバい事態になったとユウウツになった。韓国軍と北朝鮮軍が砲撃し合い,韓国軍兵士2名だけでなく,かなりの犠牲が出たらしい。

金正日の若き後継者がお披露目されて,北朝鮮では大きな政争が起きているのかも知れない。私なんかは想像するしかないのだけど。内憂を外患にスリ替えるのは政治の常套手段であって,北朝鮮国内は切羽詰まったところに来ているのかも知れない。韓国軍艦撃沈事件もまだ記憶に新しいところで,北に優しい韓国国民といえどもこれでいよいよ熱くなるのも必至である。冷静に,冷静に,と願わずにはおれない。朝鮮戦争が仮に再開されたら米国,中国がくちばしを挟むことは当然なのだから,日本も巻き添えを喰らう。勘弁してくれ。ま,そうはいっても,北と南のトムとジェリーぶりはいつものことであって,韓国人も北朝鮮人もこういう事案に馴れない日本人ほどヤワじゃないので,私は本心で心配しているわけじゃないんだけれど。李明博大統領は「追加挑発時には断固対応する」と声明を出した。これは「おめぇが仕掛けない限りこちらからは軍事行動を起こさない」という,弱気とはとられずかつ極めて冷静な,きちんとしたメッセージになっている。さすがである。

柳田さんが遅まきながら辞任したけど,朝鮮半島の事件に比べたら,吹けば飛ぶくらいのハナクソのような話題である。昨日の朝日新聞夕刊一面にデカデカと載った記事によれば,「個別事案への回答は差し控える」,「法と証拠に基づき適切にやっている」,この二つの答弁テクニックでもってラクに国会を乗り切っているとでもいうような発言のおかげで,「国会軽視」のモーレツな批判を浴び,柳田法相がとうとう辞任に追い込まれた。ブスの前でブスと言ったらそりゃ人格を疑われて怒られるわいな。どうしようもない脇の甘さ。バカ正直。失言で大臣をクビになるなんて,自民党政権末期と似て来たとも言える。次に前原くんあたりが泥酔会見をやってくれると,ホント楽しいんだけど。

でも,それくらいのことで,世の中みんながなんでこんなに大騒ぎするんだろうか。こんなのは下劣な週刊誌だけで盛り上がればよい事件なのだ。一方で,「尖閣諸島は領土問題」などと基本的国家認識(日本領土・領海認識)における閣内不一致を露呈した失言をなした閣僚・蓮舫さんは,辞めろとまでは騒がれなかった。むしろ,ファッション雑誌に写真を撮らせたという,どうでもよいことのほうが問題視された。なんか政治的「常識」というものがマヒしていないか。お茶の間にわかり易いストーリーで政治的現実が脚色・歪曲されていないか。マスコミ全体が週刊アサヒ化していないか。こんなことじゃ,朝鮮半島の事件のような本当に震撼すべき事案にぶちあたったら,日本国民はそれこそキンタマが縮み上がって思考停止状態で固まってしまうんじゃなかろうか。
 

※ 11.27 付記

法相をクビにしても何も国会運営が好転しないのは,誰の目にも明らかなのに菅さん,いったい何を考えているんでしょうか。この場合もどうして「好転期待の様子見」をしなかったのでしょうかね。どうしてあんなにヘボな野党に屈するんでしょうかね。昨夜,仙谷さん(馬淵さんというオマケ付だけど)の問責決議案が参議院で可決され,自民党は審議拒否も辞さないといよいよ強気になって来た。腹黒くしたたかな小沢さんを外すからこういうことになるのがまだわからないようである。電撃辞任も間近か。その前に解散総選挙をしてほしいと思うんだけど,「何もしない」菅政権じゃ無理か。年明けの次期通常国会のころには前原総理大臣になっている,に一票。

菅首相は支持率 1% でも続投すると話したそうである(このニュースの Yahoo! コメントに「民主主義の意味を知っているのか」という批判があったが,この発言者そのものが民主主義をわかっていない。政策を決定する者が選挙で選ばれたかどうかが民主主義の基本であって,基準の明らかでない支持率なんぞ 0 でも民主主義に反しない)。そこまでハラを括っているのであればもっとどぎついことをやってもらいたいものである。
 

※ 11.30 付記

北朝鮮は拉致問題,核開発に関してわが国の敵である。だから私はこの国の政府を好かないのだけれど,報道を見ていると当然ながら中立的とはいえないのも少し頭に来る。

今回,北朝鮮が「先制攻撃の暴挙」に出たことになっている。けれども,このとき南北国境海域で米韓が軍事演習をしていたわけで,北朝鮮の捉え方からすれば軍事的に対処すべき「挑発」だったとも言える。

韓国軍兵士 2 名のほか民間人にも多大なる被害が出た。この点がこれまでの南北小競り合いになかったことで,もしや本当の戦争再開になるのではとの心配を煽ったところである。「被害」については韓国側ばかりが報道され,「こんなことをやりやがった北朝鮮め!」の世論が日本でも支配的である。でも,この砲撃合戦の端緒が上記のごとく己の立場からだけしか見ない限りにおいて,やはり北朝鮮側にもそれなりの不幸な被害が出ただろうことは見落とされてしまう。

敵愾心を煽るのは報道の役割なんだろうか? それじゃ拉致問題なんて解決しないのではないだろうか。拉致被害者家族の方々もことあるごとに北朝鮮制裁を強く叫ぶのだけれど,政府が「制裁」以外,北朝鮮との交渉をまるで行っていないのをどのように見ているのだろうか? 拉致問題担当大臣を兼任していた柳田みたいな事勿れ主義政治家に,拉致被害者家族の方々がどれだけの期待をかけていたか,大いに疑問ではあるのだけど。

少し前,アントニオ猪木が北朝鮮に招待されて平壌を訪れた映像をテレビで観た。いまの日本は北朝鮮と仲良くやろうとする政治家を見出すとすぐ「売国奴」扱いするか「利権」に結びつけるかしかできない低能児だらけなんだけど,こういう政治家もいないと,北朝鮮はまったく付け入る余地のない国となり,問題解決はいっこうに進展しないのではないだろうか。小泉さんは偉かったなといまにしてつくづく思う。そのあとのウソツキ川口順子外務大臣のおかげで(こいつが「拉致被害者を一時的に帰国させる」という約束を反古にしたおかげで,日本政府の信頼は地に落ちた。できない約束なんてするんじゃねぇ)北朝鮮外交は完全に潰れてしまったのだから。

妻が大貫妙子の新譜を買って来てくれた! 『UTAU』。大貫妙子のボーカルと坂本龍一のピアノによる作品集である。アルバムのために書き下ろされた曲『a life』が入っているけれど,ほとんどはすでに出ている作品の再アレンジである。大貫妙子は志賀直哉や日影丈吉みたいな作品集の出し方をする。

私の大好きな曲『夏色の服』も入っていた。涙がちょちょぎれるくらい感動しております。最近のくだらない JPOP に嫌気がさした人にぜひお勧めします。ションベン臭い音楽シーンに息詰りそうな人に。可愛い女の子集団がテレビ画面のなかで飛び跳ねているのに,終末を感じないではおれない人に。
 

UTAU(2枚組)
大貫妙子 & 坂本龍一
commmons (2010-11-10)
 
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今日午后,テレビで J リーグ,名古屋グランパス VS 湘南ベルマーレの一戦を観た。グランパスが初優勝を決めた。ストイコヴィチとトヨタ社長が抱き合っていたのが印象的である。野球の中日もリーグ優勝を果たし,米国で叩かれたトヨタも業績を回復しつつあり,ここでグランパスの J1 初制覇が成った。名古屋は絶好調である。

日本は東京の文明だけで成り立っているんじゃない — これをキモに命じよう。
 

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昨夜,田町の顧客との打合せのあと,子分と飲みに行った。麦酒をジョッキで 4, 5 杯飲んで帰る途中,猛烈にラーメンを食いたくなった。京浜東北線に乗った行きがかりでそのまま川崎まで行って下車した。もうすでに 23 時半になっていたが,電車がなくなれば自宅まで歩けばよいと腹を括った。

チネチッタすぐ横にある横浜家系のラーメン屋に入った。醤油豚骨に豚角煮をトッピングしてもらった。食いながら,店にあった週刊誌『週刊大衆』を読む。

これは 50 年くらいの歴史を持つエロ週刊誌である。ヤクザ記事,芸能ゴシップと下半身ネタばかりの下劣週刊誌の代名詞のようなヤツである。『仙台美女にアソコ見せて』 — ハイハイ。『上戸彩VS黒木メイサTV界を揺るがす『CM女王バトル』最前線』,『芸能美女の『淫ら下半身』み~んなバラす!』,等々の記事。読者はこれらを読んで大いに楽しむわけだが,その真実性についてはまったく信じていないはずである。それが「大人」というものである。西野翔のヌード・グラビアを観た。ラーメンの汁が器の横に広げたグラビアの乳首のあたりに飛び散って,「すみません」とそれを拭い取らなければならなかった。『日本が着々と推し進める『ゴロツキ中国ブッタ斬り』裏工作』なる記事は,レアアース禁輸を受けた中国包囲外交について,意外や意外,菅政権を評価していた。菅政権を叩くことしか考えないバカ・ネット右翼の戯言や一般新聞の記事に呆れ返っている私としては,いたく興味深かった。この週刊誌には『エッチ倍増袋とじ』なるページがあったのだが,信じられないことに封がされたままであった。ビリビリ破いて見るのは,大人げないと思い,やめました。

さとう珠緒が連載記事を書いていた。あの「プンプン」のぶりっ子ぶりで恐らく世の女性から嫌われまくっているこのさとう珠緒が,私は大好きなんである。彼女が『オーレンジャー』でデビューしたのをリアルタイムで観て知っているのは,当時幼い子供のいた私のようなオヤジだけだろう。悪の組織にいたぶられて,「お前たちを赦さない!」なんて激烈な台詞を叫ぶことができるのは,ヒーローものに出た俳優の特権である。彼女の書いたというその記事は,中村玉緒がとても優しい人である云々。「プンプン」と同じくらいくだらないものだった。

それでも。この『週刊大衆』を私は高く評価している。阿佐田哲也の名作『麻雀放浪記』を長期連載した雑誌,というだけで何が何でも支持したくなるんである。

角煮入りラーメンは量が多すぎた。全部食ったら,酔いの煽りで気持ち悪くなって来た。ラーメン屋を出て川崎駅に向かう途中,「お兄さん,遊びませんか」と女に声を掛けられた。川崎駅前・新川通り沿いはこの手の女(おそらく売春婦)がうじゃうじゃいる。中国人か韓国人が多いように思う。ちょっと不憫になる。手を振って追い払って,南武線最終のひとつ前の電車で帰宅した。
 

* * *

D. Smirnov から,彼による松尾芭蕉句のロシア語訳についてチェックしてくれとの依頼を受けた。英語,ロシア語で手に入るいろんな芭蕉関連文献を丹念に調べていて頭が下がる。最近,Jane Reichhold による "Basho. The Complete Haiku" なる英訳全句集が Kodansha から出て,目下それに首っ引きだそうである。また芭蕉の俳句に基づく室内歌曲を作曲してほしいものである。

チェックを頼まれたのは,芭蕉寛文時代の最初期の 10 句である。日本語記述の誤りを正し,加藤楸邨『芭蕉全句(上)』(ちくま文庫,1998 年)から興味深い記述をロシア語に翻訳して送ってあげた。私は芭蕉の専門家でもないので,それくらいのお手伝いが関の山である。寛文時代の芭蕉の句は,私にはどうもイマイチである。「夜竊虫は月下の栗を穿つ」(延宝八年)— 冴え冴えとした静かな狂気に恐ろしくなる名句である — のような,漢詩文の伝統を巧みに詠み込んだ句あたりからがいいと思う。
 


(英文版)松尾芭蕉全句集 - Basho: The Complete Haiku
Matsuo Basho 松尾 芭蕉
Jane Reichhold
講談社インターナショナル

ワンクリック不正請求詐欺対策

息子の PC に取り憑いた不埒なプログラム(エロサイトの金額請求画面が出まくる迷惑プログラム)は,Spybot の検査では果たして検出されなかった。これは,スパイウェアというよりも,「ワンクリック不正請求詐欺」というものだそうである。いかにエロサイトを見ているといえども,さすがにいかがわしいプログラムを実行したりしない私は,こんな経験はなかったので,バカ息子のおかげで勉強になった。これを「ワンクリウェア」と呼んでいるサイトもあった。ワンのクリするなんとかなんて,イヤらしさの気が利いている。だから私も以下「ワンクリウェア」と称することにする。

多くのワンクリウェアの手口は,「この動画を見たい人はコレを実行」とかなんとか唆して,スクリプトをエロ閲覧者にダウンロード・実行させるというもの。スクリプトは,mshta.exe を自動起動するようにレジストリを書き換えてしまう。すなわち,システム起動と同時に mshta.exe(これ自体は Windows 付属のきちんとした HTML 解釈器らしい) が指定サイトの請求画面をデスクトップに貼付けるような動作を引き起こす。そういうのが代表的な振舞いのようである。

対策方法は "mshta ワンクリック" ででも検索すればわしゃわしゃ得られる。参考までに今回私が採った対策をメモしておく。ただし,ワンクリウェアはモノによっては追加的工夫をしていて,ひとつの手順であらゆる亜種に対抗できるわけではなさそうである。それを考慮した上で以下の対策を参考にしていただきたい。

msconfig(「スタート」→「ファイル名を指定して実行」から msconfig と入力して実行する)のスタートアップ一覧を子細に確認すると,mshta.exe http://www.dhfksfundsd.biz/reg2.php?... なるものが登録されていた。レジストリエディタ(「スタート」→「ファイル名を指定して実行」から regedit と入力して実行する)でも,mshta を検索すると ...\Shared Tools\MSConfig\startupreg\system_boot_...mshta http://www.dhfksfundsd.biz/reg2.php?... のようなコマンドが登録されているのを発見した。msconfig スタートアップ一覧で停止させるか,レジストリのこのエントリをごそっと削除すれば,起動時にこいつが動くのを停止できるはずである。レジストリエディタの操作は,ヘタすると取り返しのつかない障害に陥るので注意してほしい。責任は持てません。また,ワンクリウェアによってはレジストリキー(登録場所)が違う場合がある。msconfig で停止させるので充分だと思う。これでワンクリ対策が終わる場合が多いようである。

しかし,今回はこれだけではなかった。以上の対策をして再起動しても,しばらくするとまた症状が出る。システム停止時に再登録するウィルスでも併用しているのかと,大いに悩んだ。しかし,そんな迂遠な手法を採るだろうかとしばらく考えるうちに,タスクスケジューラに気付いた。このワンクリウェアはスタートアップに登録するだけでなく,タスクスケジューラに定期的に同じコマンドを実行させる工夫をしていた。タスクスケジュール一覧(これは「コントロールパネル」→「タスク」などから確認できる)を開いて,そのタスクを削除した。これでウチのワンクリウェアはやっとおとなしくなった。

プリンタを買う・スパイウェア

プリンタが壊れた。インクを買い足したところだったのに。年賀状を作る季節が近づいたというのに。プリンタというものは肝心なときに壊れるものである。これまでもそうであった。しようがないのでまた安い製品を買うことにした。ウォーキングを兼ねて川崎ヨドバシカメラに行った。適当に物色し歩いて,キヤノン製 PIXUS iP4830 というインクジェットプリンタに決めた。15,800 円也。このモデル,なんと自動両面印刷が可能で,重宝しそうである。

最近はコンピュータのハードやソフトを買って来ても,何のわくわく感も覚えなくなってしまった。むしろ,ハードの組立て,ソフトのインストール・設定などなどの面倒がまず頭に浮かんで,うんざりしてしまう。私の家にはいくつも PC があり,Mac OS X 2 台,FreeBSD 1 台,Windows 7 1 台,Windows 2000 1 台でプリンタ共有するためには,Mac OS X の cups の設定やら,各マシンのプリンタドライバの設置やら,気が重くなってしまう。そうはいってもやるしかない。

ところが,プリントホストとしている Mac OS X Tiger マシンに接続して,Acrobat から PDF を印刷しようとしたら,ドライバが考え込んでしまってうまく印刷できない。これまで使っていた iP4300 のドライバが悪さをしているのかと思い,これを削除してみたが,状況は変わらず。ユーティリティからテストプリントするとうまく動作したので,試しに別のアプリから印刷してみるときちんと出力できた。ん? Acrobat 7 だとだめなのはなんで? これ,キヤノンに聞くべきなのか,Adobe に聞くべきなのか? おそらくどっちに聞いても相手にされそうもない。これだから Mac はダメなんだ,とブツブツ。

大学生になる息子はレポートなどでプリンタをよく使う。彼の Windows 7 ミニノートのプリンタ共有設定だけは早いうちにやっておいてやろうと,PC を起動した。ところが,息子がエロサイトを閲覧していて余計なことをしたのか,何もオペレーションをしていないのに,「アンタはもう X ヶ月使ったんで 9 万円払え」との請求画面が勝手に出まくって,うるさいことこの上ない。タスクマネージャからいくら終了させても,繰返し,繰返し,オバンの見たくもない裸とこの請求メッセージが出て来る。エロサイトで何かをクリックしたおかげで,スパイウェアがインストールされてしまったようである。このバカ息子め! とりあえずプリンタドライバ設置とリモートプリンタ登録を済ませてから,スパイウェア対策をすることにした。スパイウェア ... 世の中には暇なバカがあまりに多過ぎる。この世間知らずのサイト管理者がいったいどんな奴なのか知りたいものである。でも,こんなのにいちいち反応して「警察に通報してやる」と息巻くほどオレは暇じゃない。クソ。これだから Windows はダメなんだ,とブツブツ。

「プログラムの追加と削除」や msconfig のスタートアップ一覧を確認してみたが,ヘンなプログラムを特定することはできなかった。息子がフリーのゲームソフトをふんだんにインストールしていやがるんで,何が何やらさっぱりわからない。スパイウェア検疫ソフトウェア Spybot をダウンロードし,これでシステムを検査してみることにした。いま,その検疫が走行中である。当分終わりそうもない。検疫が首尾よく終了したら,ブラウザを子供向けのセキュリティの掛かったもの(『Yahoo! あんしんネット』のようなガキ用ブラウザ)に入換えて,このバカ息子を困らせてやるつもりである。

ま,インターネットを使うと誰だってエッチサイトを見てしまうものである。お子ちゃま向けブラウザに入換えて有害サイトをフィルタリングしたところで,子供たちはそういう壁だけは根気よく突破するものである。娘の話だと,中学のころ,技術の時間(いまはコンピュータの使い方を学校で教えている)のあとで男子がエロサイトを見ようとしたらしい。検索サイトで「マンコ」とキーワードを入れて検索したら,ウルトラマンコスモスが大量にヒットしてどっちらけだったそうである。さすがに教育の現場では,プロキシーがきちんと設定されていたということか。
 

※ 11.14 付記:上記問題は翌日に解決した。こちらをご覧ください。

内閣支持率

菅内閣支持,急落27%=自民が民主逆転—時事世論調査』だそうである。

菅内閣支持率は,代表選挙直後 40% 以上あったのに,ここへ来て外交無策のために急落。一方,民主党の政党支持率も,政権交代後はじめて,自民党に追い越されたらしい。ま,雰囲気的にはしようがないように思う。

でも。今回の民主党政権のあの無様にも見える行動は,自民党ならちゃんとやったとでもいうのだろうか。今国会での自民党議員の代表質問は,揚げ足取りの罵詈雑言を浴びせるばかりで,私が国会中継の模様をテレビで見た限り,肝心の民主党政権は痛くも痒くもないように見えた。あんたら自分のやってたことを棚に上げてよく言うよ,ってカンジ? この自民党の相手に舐められた闘いぶりひとつ見ても,自民党は野党としてまったくのダメ政党であることを証明していた。何でこんなんで自民党の支持率が上がるんでしょうか? 今回の中国漁船問題に関しては,民主党政権(前原国交相)の見通しの甘い「強気の初動」こそに失敗の要因があると私には思われるのだが,自民党政権時代では「逮捕・拘束」なんて中国にビビってそもそもできなかっただけなのである。

こういうところからも,この「支持率」,私にはどうもそれほど重要な指標とは思われない。もちろんいま衆議院解散・総選挙を行ったらどうなるか,ということについては,この数値がそのまま選挙結果に繋がるだろうとは思う。でも考えてみれば,今回の菅内閣支持率 27% は,麻生内閣時の最低支持率 10% 弱に比べるとまだまだマシなわけである。マンガばっかり読んでた首相より菅さんのほうがマシってか? 菅内閣はまだまだ「落ちる余力」があるわけである。麻生さん以下にならないうちは,菅さんは大きな顔をして政権運営していただきたいと思います。

小渕内閣はバブル崩壊後の構造不況や冷戦時代の外交課題に果敢に取り組んで,IT 政策など今日の基盤を築いた優れた内閣だったと私は思う。ところが小渕さんは人気がなく,内閣発足後の支持率は 24% と極めて低いものだった。一方,小泉内閣はあの劇場政治で大いなる人気を博し 70% 以上の支持率を獲得したが,反中・反韓・反露世論を焚き付けて対米従属根性を政府に植え付け,対米以外の外交をことごとく放置し,アジアで日本を孤立させる元を作っただけでなく,国内的には社会的弱者を急激に増大させた。現代日本の政策の元凶だとさえ私は思っている。支持率の高い内閣がよいとはとても言えないようである。

国会中継を見る限り,民主党のほうが自民党よりもまだマシである。私は潔癖症的・よい子ぶりっ子的・権力主義的民主党議員(千葉景子はその代表。おっと,もう議員じゃございません)が大嫌いだけど,自民党が復活するくらいなら,たとえそのリーダーが存在感のない菅さん(お体大丈夫ですか?)でも,逮捕されるかも知れない小沢さんでも,口先だけ威勢の良い前原さんでも,本質的ヤクザで頼もしい仙谷さんでも,私は民主党政権を支持する。外交問題で脇の甘さを露呈し続けているが,二,三年,ん?四年くらいはガマンである。政権交代はそれくらいのリスクを負うに値する。ま,中国に対して強硬な姿勢を貫けなかったという点で民主党を攻めたい人は,日本共産党を支持なさってはいかがでしょうか。中国批判の舌鋒の鋭さでは,日本共産党は怖いくらいであって,自民党も形無しなんであるから。日本共産党は「中国側も,事実にもとづき,緊張を高めない冷静な言動や対応が必要でしょう」なんて「中国さん,あんたガキか」ともとれるようなことをヌケヌケと『赤旗』に書いています。

運命じゃない人・監禁逃亡3

ツタヤから DVD が届くと娘が「何? 何?」とうるさい。私は「お父さんがいない間に勝手に開封すんじゃねぇぞ」と娘にいつも釘をさしている。というのも,エロ DVD を借りているのを子供に知られるのはまずいからである。このエロ親父,娘から「エッチな映画でしょ。アタシにも見せてよ」と,じつは見透かされているんだけど。「大人だけが観ていいの! お兄ちゃんはもう大学生だからいいけど,おめぇはまだバカな高校生だからダメ」と断固お断り。じつは今回郵送されて来たツタヤ DVD 映画のうち,一本はピンク映画であった。もう一本は喜劇の邦画。

昔はピンク映画を映画館で観たものである。ところが,アダルトビデオが全盛となってこのかた,名画座だけでなくピンク映画館も片っ端から潰れてしまい,いまや絶滅寸前の状況である。暗闇のなかでパブリックビューイングでエロ映像に見入るというのは,一種独特の共犯幻想体験にも似てなかなか味があったのに。残念である。学生時代,札幌の大学周辺にはいくつもピンク映画館があった。北二十四条に「シネマ24」,北十八条に「みゆき座」,東何条だったかにもひとつ。名画座も「ジャブ70」,「シネマ23」など事欠かず,いまから思えば映画ファンには夢のような時代だった。「シネマ24」はピンク映画メインなのにときおりアンドレイ・タルコフスキイの『アンドレイ・ルブリョーフ』など渋い名作を掛けてくれたりした。500 円も払えば 3 本立てでエロ映画が観れ,煙草も吸い放題,しかも何時間居座ってもよいので,冬寒くても灯油の買い足しもままならない手元不如意の月末,授業のない日なんかには,一日中ピンク映画館にいて,映画を観,眠くなったら寝,ちょっと飽きたらロビーで文庫本を読み,なんてアホみたいなことをしていたものである。

首都圏のピンク映画館にはイヤな思い出がある。私が就職して東京に出て来たころ,川崎駅周辺の繁華街にもピンク映画館があった。南町のストリップ劇場・川崎ロック座のすぐ近くだ。いまはもうご多分に漏れず潰れてしまった。私は結婚する直前,会社の総務部の手違いのおかげで,社宅に入居できる2日前に蒲田の独身寮を追い出され,帰る場所を失って夜中に川崎駅周辺を彷徨したことがある。バブル崩壊前夜,1990 年のことである。そのとき,何時間いても追い出されないので,そのピンク映画館で時間を潰そうと思った。ところが,そこは,汚く,酒臭くて空気の重い,繁華街の歓楽と欲望の吹きだまりのような空間だった。札幌では見るからに学生っぽい客が目立ったが,ここの客は年寄りばかりであった。おまけに真夜中だからか,ヘンな奴らが暗闇に蠢いていた。ある列を独り占めできるくらい席に余裕があったのだが,私が眠気にうつらうつらしていたら,いつのまにやらすぐ横の席に男が座っていて私の体に触ってくる。ホモの痴漢のようだ。私は「何すんだ!」と小声でどなりつけて,すかさずハコの最後尾に逃げた。そこでしばらくぼっとスクリーンを眺めていると,今度はすぐうしろの雰囲気の異常に気付いた。ふっと振り返ると,女装したオカマが 3 人くらいのオヤジにお触りをさせていた。「ヘンタイがエロ映画館に来てエロ映画を観もせずにヘンタイしてどうすんだ?」といよいよ私も呆れ果てて,その映画館を出てしまった。首都圏のピンク映画館のヘンタイぶりに驚いた。やっぱりピンク映画館は学生街に限る,などとへんな認識を深めてしまった。というか,1990 年当時にはピンク映画館は,もうエロ映画を観るところではなく,特殊な社交場と変わり果てていたのかも知れない。そのあと,しようがないので,サウナ — いまのチネチッタのある界隈にあった — に行って寝た。体に極彩色の絵をお描きになった方々がたくさんおいでであった。

なんでこんなこと書いてんだ? そうそう,ツタヤでピンク映画を借りました。作品は『新・監禁逃亡 3 ~美姉妹・服従の掟』。2010年,できたてのホヤホヤ。カワノゴウシ監督作品。出演は,伊東遥,水元ゆうな,石川ゆうや,幸将司ほか。ピンク映画はかつての日活ロマンポルノとはビミョーに違っていて,エロシーンを何分かに一回入れなければならない脅迫観念に支配されている。 ストーリー性において過酷な作品設計を強いられている。それだけに,この極めて高いハードルをクリアしつつ少しでも物語性に興味を覚えさせる作品に出会うと,意外性の感銘を覚えてしまうわけである。そうして,この『新・監禁逃亡 3』は,ピンク映画にあって,ストーリーになかなか出色なところがあったんである。こんな恥ずかしい話題をここで書き記すのもそれゆえなのだ。

普通の映画ならネタバレをここで書く気にはならないんだけど,ピンク映画は本来的に興奮道具のようなシロモノでもあり,観に行く人はおそらく物語性をまったく期待しないだろうから,敢えて書いておく。主人公・琴美(伊東遥)は,姉(水元ゆうな)の娘の死が癒せぬ心の傷になっている。琴美は,自分が誘拐を警察に通報したために娘が殺されてしまったと思い込んでいるのだ。あるとき琴美と姉とは,眠っている間に,閉鎖工場に拉致・監禁されてしまう。そこで二人は覆面男のなすがままにされる(ピンク映画の本領発揮)。香水の匂いから琴美はこの覆面ヘンタイ男が自分の夫ではないかと疑う。じつはこの監禁は,娘を殺された姉夫婦による復讐劇だったことが明らかになる。常規を逸した(というより,その動機・背景にどうしようもない無理がある)監禁強姦・虐待は,琴美の夫をして「こいつら狂ってる」と言わしめる。しかし,物語の最後で,娘殺しの真相は不妊症だった琴美の病める嫉妬心によるものだった ... というもうひとつのウラのオチが暗示される。少子化が問題となる一方で,子供を産みたくても産めない夫婦も話題になる昨今の,笑えない世相の一端が窺われる。スケベの制約のなかでただのスケベだけで終わらないウラのウラがあって,面白かった。近藤将人による音楽 — ピアノの不気味なモノローグもなかなかよかった。
 


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もう一本は『運命じゃない人』。2004 年,内田けんじ監督・脚本作品。主演は中村靖日, 霧島れいか,山中聡,山下規介,板谷由夏。映画の冒頭を見てすぐわかるんだけど,これ,インディーズ系のむちゃくちゃ低予算の挑発的な作品である。しかし,めちゃくちゃ面白い。 渋谷ユーロスペース(JR 渋谷駅西口を出た桜丘町にある,マイナー映画を見せてくれる知る人ぞ知る貴重な映画館)風と思っていたら,ホントにユーロスペースで封切られたそうである。

婚約者に裏切られた宮田(中村靖日)は,親友の神田(山中聡)に呼び出された深夜のレストランで,やはり婚約者に裏切られた桑田真紀(霧島れいか)と知り合う。宮田を騙し彼が金を持っていないと知ってドロンした女詐欺師・倉田あゆみ(板谷由夏)は,目下の詐欺のターゲットであるヤクザの親分・浅井(山下規介)から大金を奪って逃走し,宮田のマンションにそれを隠す。それを知った神田は,ヤクザのヤキ入れを怖れてあゆみに金だけは返させようと目論む。ところがあゆみは金を下着にすり替えた上,神田の名刺をアタッシュケースに入れて返却し,罪を神田になすり付けようとする。浅井は名刺から神田の事務所を特定して侵入し,神田のファイルからあゆみの素性とともに金の隠し場所の目星をつける。ところが,宮田のマンションのベッドの下に隠れた浅井が見守るなか,真紀がダンボールのなかの金を見つけ,ついついネコババしてしまう...。こうした一連の主人公たちの行動において,まったく同じ場面が登場人物の視点を変えてコミカルに描かれる。ある登場人物の視点においては何気ない絵が,あとで別の登場人物の視点による同じ場面では抜き差しならないディテールに変貌する様が,人生の数奇を如実に浮き彫りにするのだ。また凄いことに,ドラマはわずか一晩の間の事件から成り立っている。

ぜひご覧あれ。低予算でも工夫次第で凄い映画が撮れることがわかる。豪華キャストでいくら使ったのかわからないようなロードショー作品を嘲笑うような挑発的作品である。しかも,『新・監禁逃亡 3 ~美姉妹・服従の掟』はエロオヤジにお勧めできるに過ぎないけれども,『運命じゃない人』はこれよりもっと楽しく面白く,万人が楽しむことの出来る傑作である。普通のつまらない人の出会いは,「運命的」とはまったく思われないかも知れない,しかしそれだけに人知れぬ数奇さが滲み出る,そういう感動があった。「知り合って電話番号を聞いておかなきゃ,二度と逢えないじゃねぇか!」— こういう通俗的真理が妙に心に突き刺さる,そんなドラマである。主演・中村靖日のあのどうしようもないパンピーぶりがいい。コミカルな悪女役・板谷由夏もキュートであった。こんな映画は定期的に観たいものである。
 

運命じゃない人 [DVD]
エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ (2006-01-27)

Khartiya, Heuristica LaTeX packages

先日書いた『Хартия, Эвристика フォント: Autoinst によるフォント組込み』で OpenType フォントから autoinst を用いて LaTeX タイプセットに必要な諸々のファイルを生成する方法を探ってみた。でもじつは,こんな面倒なことをしなくても,これらフォントのダウンロード・サイトには LaTeX 用のパッケージ一式が公開されていた。Хартия: http://code.google.com/p/khartiya/downloads/list から khartiya-0.2-tex.tar.xz を, Эвристика: http://code.google.com/p/evristika/downloads/list から heuristica-0.3-tex.tar.xz を取得して,TeX ツリーに展開すればよい。オペレーションは以下のとおり。$TEXDIR にはインストールしたい TEXMF トップディレクトリを指定する。~/Downloads は,アーカイブをダウンロードしたディレクトリを示す。

% mkdir -p ~/tmp/khartiya-heuristica
% xz -dc ~/Downloads/khartiya-0.2-tex.tar.xz |\
  tar xvf - -C ~/tmp/khartiya-heuristica/
% xz -dc ~/Downloads/heuristica-0.3-tex.tar.xz |\
  tar xvf - -C ~/tmp/khartiya-heuristica/
% su -m
# cd ~/tmp/khartiya-heuristica/
# tar cf - ./doc ./dvips ./fonts ./tex | ( cd $TEXDIR; tar xvf - )
# mktexlsr
# updmap-sys --nomkmap --enable Map=khartiya.map
# updmap-sys --enable Map=heuristica.map

フォントを使うには LaTeX 原稿に \usepackagekhartiya.sty, heuristica.sty を指定する。autoinst で自動生成した場合とは異なり,LaTeX パッケージではマクロファイル名の先頭が小文字になっている。

これら LaTeX パッケージは T2A キリルエンコーディングのほか,T1, TS1 用のフォント定義を含んでいる。autoinst によれば autoinst --encoding=T2A,T1,TS1 *.otf で生成した場合と同等になっている。textcomp パッケージと併用すると,\textcelsius などのマクロを Хартия, Эвристика フォントで出力することができる。ただし,これらフォントは textcomp のすべての文字を収録しているわけではない(例えば \textleaf やオールドスタイル数字: \text*oldstyle などは含まれない)ので注意が必要である。私がこの前書いた記事では,autoinst の --encoding オプションに TS1 を指定していないので,その場合,textcomp の出力は標準の TC あるいは Latin Modern フォントが拾われるはずである。どちらがよいかは利用者次第であろう。
 

* * *

今日の朝日新聞夕刊スポーツ面で『鄭大世 賛辞と批判』というコラムを読んだ。北朝鮮代表としてワールドカップに出場した彼は,川崎フロンターレからドイツ二部リーグのボッフムに移籍した。そこでチームの得点頭となる活躍をする一方で,警告で退場するなどの迷惑ぶりでも目立った選手になっている,そういう記事だった。ファイティング・スピリットに溢れる鄭大世らしいこの消息に,うれしくなってしまった。

南アフリカ・ワールドカップののち,海外に移籍する日本人選手がいきなり増えた。香川真司選手などドイツ・ブンデスリーガ・ドルトムントで大活躍している。内田篤人選手のアシストであの元スペイン代表ラウールがゴールした,なんていう話を聞くと,サッカーでもワールドクラスの話題に日本人が食い込んで来る時代が来たんだ,とうれしくなってしまう。70 年代,80 年代,日本がワールドカップ出場とはまったく無縁であった時代,日本人が指をくわえてワールドカップを観ていた時代を知っているだけに,感無量である。

こういうところからも,私たちの世代の日本人よりもいまの若い日本人のほうが優れているということを実感するのだ。そういう点がいちばんうれしい。

日吉・綱島・大倉山散歩

日曜日,妻とウォーキングした。今回のお散歩ルートは横浜方面。お隣りの横浜市港北区の日吉,綱島を経て大倉山まで歩いた。午過ぎ,新川崎駅跨線橋から西に向かった。操車場には電気機関車が往ったり来たりしていた。

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尻手・黒川道路を越えてさらに行くと道が狭まり,慶應大学・矢上/日吉キャンパス一帯となる。「日吉ってこんなに近いんだ」と妻はびっくりしていた。慶應・日吉キャンパスは理工学部関係の学舎があると聞いたが,中国文学シンポジウムの看板がでかでかと出ていた。大学付近は小振りで個性的なデザインの瀟酒なマンションが目立つ。お金持ちがいっぱい住んでいそう。すぐ隣なのに私の住む川崎市幸区とはエライ違いである。銀杏が色づいていた。

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綱島街道をずっと南下した。綱島駅近くの街道沿いに,夏目漱石みたいな作家が机に向かっていそうな古く奥床しいお屋敷があった。妻が 20 年前に住んでいたぼろアパートを見に行こうということになった。久しぶりに綱島駅前商店街を歩いた。ミッキー安川さんの似顔絵の看板以外は,かつての記憶がほとんど失われていた。あのアパート,どう行くんだったっけ。妻もまったく忘れ去っているようだった。歩いているうちになんとなく思い出して来た。米屋の前を折れて坂を上がったところのあの場所は,残念ながら,もうコーポなんちゃらの新しい建物に建て変わっていた。

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横浜市港北区は小高い丘の多い地勢である。妻が独身最後の日々を送ったアパートは,そんな丘の大きな林を背負った,築何十年かの木造 2 階建てだった。昔の刑事ドラマに出て来る,犯人の潜伏する貧しい愛人宅という感じのぼろアパート。「アンタァ,逃げて!」のなんとか荘のイメージ。内風呂なんて当然ない 1K。林に半ば食い込むように建てられたそのアパートは,山の中の隠れ家のような雰囲気があってよかった。でもその代償として,ここが都会とは思われないくらいの大きな蜂や毛虫に出くわした。ムカデも出た。ある時,私がコーヒーを入れようと湯を沸かし,ガスコンロ横の雑巾を取り上げたら,20 センチ以上あるかと思しき褐色の巨大なムカデが目の前でうねっていた。こんなのに刺されたら失神してしまうかも知れないと思うと,私は恐怖のあまり包丁でそれを押さえつけて殺そうとした。ところが体が鋼のように硬くて切断できず,死にやしない。そのまま流しに引きずり落とし,熱湯を浴びせかけてやっとお陀仏となった。物持ちのよい妻はそのステンレス包丁をいまだに使っている...

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綱島から大倉山に向かう。もう薄暮の頃合いになっていた。鶴見川の東横線の橋桁下の川縁で中年男がパンツいっちょの裸でなにやらやっていた。ちょっと興味があったがそのまま歩を進めた。大倉山駅前に到着するころには,すでに陽が完全に落ちていた。駅前の,妻の綱島時代によく行った,果物屋の階上にある喫茶店でコーヒーを飲んだ。当時は "Café du refuge clair" (ルフュージュ・クレール) という名前の,ヨーロピアンのお洒落な店だったが,時が過ぎいまは「グランデ」という名になっていた。クリスチャン・ラッセンのイルカ絵のポスターが飾ってあった。音楽もイージー・リスニング調に変わっていた。フランス近代のヴァイオリン小曲のクラシックの似合う雰囲気は失われていた。けれども,マンデリンは旨かった。いずれにせよ,こうした旧き個性的な喫茶店は,スタバなどのチェーン店舗に淘汰され,絶滅寸前になってしまった。

坂道を上って白亜の大倉山記念館を見て,東急東横線で帰途に着いた。歩きに歩いた。帰宅して万歩計を確認したら,21,260 歩だった。

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尖閣ビデオ流出事件

昨夜,二時前くらい,寝ようかと思いつつふと Yahoo! を覗いたら,中国漁船衝突ビデオが YouTube に流出したことが報じられていた。たまげた。その YouTube 動画を閲覧しようとしたが,アクセスが集中しているのか,まったく画像が動かなかった。当然,今朝一番に日本中に衝撃が走った。会社でも「あれ見た?」とささやき合う社員がちらほらいたくらいである。日本全国,一日中,その話題でもちきりだったのではないだろうか。

私はこのビデオそのものにはもう何の関心もなかった。もう犯罪証拠として使うタイミングを逸しているので,いまへたに公開しても問題を非建設的に蒸し返すだけで,何の役にも立たないと私は考えていた。政府が極々限定的にしか国会議員に見せなかった理由がよくわかるのである。この流出ビデオを見て中国漁船の不当さがはっきりしたと考えている人は自己本意の思考法に囚われているだけのただの愚か者だ,と私は思っている。尖閣諸島海域が自国の領土だと主張する中国人の立場に立ってみると,「わが中国の海域に小日本の巡視船が不当に侵入して来たのに対し,同胞が英雄的行動で立ち向かった」との解釈がまかり通るのは明らかだからである。だから,このビデオが民主党政権攻撃の材料,反中世論の触媒にこそなれ,建設的な意味はゼロだというのだ。中国人船長,船という物的証拠を中国に帰してしまい,起訴しなかったいま,このビデオはもはやなんの意味もなくなってしまった。いわんや,わが国にとって尖閣諸島は領土問題ではないのだから,とにかく静かにするのがいちばん国益に適うはずなのである。騒げば騒ぐほど,領土問題の存在をアピールしたい中国の思うツボなのだ。

そこでこの流出事件。中国漁船問題への対応で菅政権に私は愛想が尽きたのだが,この流出事件で,逆に菅政権を応援したくなって来た。というのも,この事件で国家が内部から崩壊しはじめるようなイヤな音をしかと耳にしたような気がし,菅政権が倒れるよりもっと怖い事態に日本が晒されるような不安を覚えたからである。たとえ愚かな政府でもその要員たる国家公務員はその政策に忠実に従うべきであって,そのなかに確信的な裏切者がいると,組織は内部から壊れてゆく。そんな政府は誰からも信頼されない。国際社会は何より信頼で成り立っているのである。この最悪の事態への不安を払拭するのは,やはり菅政権でやってもらわないとならないからである。

ビデオを掲載した sengoku38 とは何者か。海保もしくは検察の者だろうというのが大筋の見立てである。沿岸警備として大いなるリスクを犯して中国漁船長を逮捕・拘束しただけに,政府の腰砕けの対応に海保の現場の人たち(彼らは命を張っているのだ)は怒りまくっただろう。それは痛いほどわかる。それだけに,海保の「憂国の士」がこれをなしたのではないかと考えるのも自然である。そのビデオを一般国民に知らしめるべきである,と考える気持ちもよくわかる。しかし,この行為は日本国政府の方針と合致しないということを認識し,国家公務員としてまず己の立場を自覚すべきではなかっただろうか。

sengoku38 氏の YouTube チャンネルを訪れると,視聴者による書き込みは「よくぞやってくれた,これぞ憂国の士」みたいな賞讃ばかりだった。こいつらは本当に日本のことを心配しているのだろうか。機密映像(それは一連の政府の行動から誰もがわかっているはずである)を敢えてインターネットに流す行動。これは政府が看過できない不正行為であるのは明らかである。しかも政府の内側の人間による行動。これは,どういう影響をもたらすか。このおかげで,内部に裏切者のいる日本政府の情報管理への不信感が世界に伝播・浸透し,友好国から重要な機密情報がしばらくは提供されなくなる危険性が絶望的に高まってしまった。裏切者の存在はテクニカルな管理手法のヘボさに比せられないくらい組織への信頼感を決定的に損なうのだ。ましてや,つい先日,公安警察国際テロ情報流出というヘマが明るみになったばかりなのだ。

sengoku38 氏が仮に海保もしくは検察に属する国家公務員だとしたら,この行為は,まずもって普通の国家情報統制観念からすれば,国家反逆行為に相当する。ロシアや中国なんかで,これに相当する行為をなすと,まず間違いなく重罪に処せられるはずである。命の保証すらないかも知れない。一方,日本では国家公務員が国家機密を漏洩した場合,国家公務員法で懲戒処分及び,1 年以下の懲役または 50 万円以下の罰金という程度でしか裁かれない。ところが,機密漏洩ゆえに日本に対する諸外国の信頼が失われるということになると,失われる国益は測り知れないわけである。

私も企業人として情報流出の怖さをよく知っているつもりである。顧客個人情報を社員が故意に流出させたというスキャンダルが一発出たために,会社が潰れた例はいくらでもある。どんなに情報管理を厳しくやったところで,情報にアクセスできる限られた内部の人間が故意に情報を漏洩することを想定しはじめると,管理もクソもなくなる。だから,最悪の事態になる前に違反者を厳しく罰するしかないのである。仮にもし私が日本の最高権力者だったならば(反実仮想の話ですよ!),草の根を分けてでも sengoku38 を探し出す。そして,この国家反逆の徒に対して国家公務員法の範囲での軽い罪に服せしめるだけではおそらく満足しないだろう。他の国家公務員に示しがつかないから。この情報漏洩犯・某は,じつは痴漢もやっていた,XX情報を北朝鮮に売り渡していた,などなど根も葉もない恥辱的罪状を警察と結託して捏造し,マスコミに面白おかしく書き立てさせ,さらに億単位の損害賠償を請求することによって,彼を経済的・社会的に抹殺するだろう。関係者にもそれに類したそば杖を食わせてやるだろう。一見,国民に優しそうに見える日本国政府は,そういう汚い手をいくらでも思い着くのである。元財務官僚で東洋大教授の高橋洋一氏が財務省に睨まれた結果,「万引き」の罪を着せられて逮捕されたのをご存知ですか? 知的エリートに恥辱的罪をかぶせるのは彼の尊厳を奪う手法としてこれ以上のものはない(高橋洋一氏はへこたれませんでしたけど)。日本の国家権力はそれくらいやるんである(外交でこそそういうしたたかな汚い手を使ってほしいと思わないこともない)。そして国家権力からそのように手酷く罰せられてもしようがないと思われるくらい,今回の情報流出は由々しき問題なのである。

国家公務員がいかに正義感にかられていようとも,己の飼い主である政府に噛み付くのは,ろくな結果を生まない。例えば,2.26 事件(この場合,国家公務員といっても軍属なんだけど)における青年将校はたしかに「憂国の士」だったかも知れないが,この事件ののち権力構造が歪み,日本が破滅の道を突き進んだのは明らかである。世の物見高い人たちが sengoku38 を英雄視しているのも,2.26 事件の当時とまったく同じように私には見える。こういうところにも私は大いに不安を掻立てられるのである。何かが崩れて行く音が聞こえる。尖閣ビデオが公開されると政局が紛糾すると私は思っていたが,まさかこんな最悪の事態を迎えようとは想像すらしなかった。

私はこの流出問題については菅政権を支持したい。菅さんには頑張ってほしいと思う。子供じみた強がり前原くん(こいつの浅はかさが尖閣漁船事案の元凶なのだ)の尻拭いをさせられている仙谷さんにはホント同情する。
 

※ 2011.11.12 付記

私は警察が動けば sengoku38 氏はすぐ捕まると思っていた。ところが,神戸の海保職員がビデオを流出させたと上司に名乗り出たらしい。いまはまだ任意で事情聴取を受けているという。私は「痴漢の現行犯で逮捕された海上保安庁職員が事情聴取のなかでビデオを流出させたことも語りはじめた」みたいな報道を期待していた。しかし,政府はやはり大人だったようである。

仕事の立場を利用して得られた情報をネットカフェから匿名でばらまく「告発の人」っていったい何でしょうか? この公務員を「憂国の士」みたいに囃し立てている人は,ホント〔中略〕じゃなかろうか。こいつら他人を「売国奴」呼ばわりするのが好きなんだが,この公務員こそ,己のくだらない功名心で己の飼い主を売っているのがどうしてわからないんだろうか? 「告発」なら堂々とするもんじゃないんでしょうか? ネットカフェから,— 隣の席では昼間っから仕事もせず(仕事が得られないからだとしたら可哀相だけど)に排外主義的・反中的・反韓的戯言を2ちゃんねる/Yahoo! コメントに書き込んでいるグータラ者(「ネット右翼」とはそういう暇人のことである)がいるネットカフェから,— 役所にバレると辞めさせられるかも知れないからこっそり YouTube に匿名でアップして,世間を騒がせてやろう,ってか? 匿名者がこっそりズルしてアップした情報の価値なんて,社会的にはゼロである。そんなズルでもたらされた匿名情報には一文の値打ちも認めないのが,健全なる社会(「民度」の高い社会)というものだ。

今回,日本政府が,「バレたらイヤだな」的 Yahoo! コメンタ/2ちゃんねらとどこも変わるところがないネットカフェ匿名男によって,はしごを外された — これこそ国辱である。日本政府の信用まるつぶれ。それは,情報管理の不備などという高級なことでは決してなく,こんな「ネットお騒がせ匿名野郎」を雇い入れているということこそが引き起こす,どうしようもない組織的不信感である。「あの国の政府には口の軽いガキがウヨウヨ雇われているらしいよ!」という不信感である。

だから「痴漢」の濡れ衣を国家権力から擦り付けられるくらいはしようがねぇと私は思っていたのだが,どうも政府はこんなチンピラ以下を相手にすると己の品位を落とすと考えたようである。逮捕も実名公表もされないかも知れない(ゴシップ週刊誌は放っておかないかも知れないけど)。ま,それでいいんじゃないでしょうか。

ぷなぁ,ぷなぁ

最近,わが家では「ぷなぁ」という幼児語のようなコトバが流行っている。ちょっと驚いたときに「ぷなぁ,ぷなぁ」と発して,愚かしいんである。これは,朱川湊人『水銀虫』のある短編に登場する弱々しい怪物が,弱いものいじめを本性とする少年たちの手にかかって殺されるときの叫び声である。ぞっとしません。
 

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日本シリーズ・中日 VS ロッテは,さすがに素晴らしい試合が続いている。近年稀に見る好カードになっているのではなかろうか。ところが,全試合中継も,地上波テレビの放送もない。中継があればあったで,早慶戦よりも低い視聴率。どうも盛り上がっているのは千葉と名古屋だけのようである。いったいどうなっているんでしょうか。勝つべき人気チームが勝てないスポーツは,見せ物としてはこうなるのか知らん。不景気を絵に描いたような有様である。それにしたって,野球のいったいどこをファンが観ているのかさっぱりわかりません。
 

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話題の検察スキャンダルに関して,柳田稔法相の肝いりで「検察の在り方検討会議」が設置される。その委員 15 人が決まったとのニュースを観た。なかなかユニークな人選でちょっとその行方に興味が湧いて来る。ところが。座長がなんと元法務大臣の千葉景子さん。この名を見た瞬間に,検討会議が菅政権のただのポーズに思われて来たんである。いろいろ示唆的な結論が出たとしても,放置されるのが目に見えるようである。

参議院であんなに偉そうに取調べ可視化法案を要求して参院可決させ,死刑制度への疑問を宣っていたくせに,法務大臣になった瞬間にその可視化法案をお蔵入りに近い状態に放置し,まったく何もできなかった千葉景子さん。死刑執行命令にハンコを付いた千葉景子さん。そりゃ,大臣ともなりゃ,過去の政策や官僚のしがらみで自由に身動きができないことはわかっています。それにしても何もしなかった。ま,「時効撤廃」をやりましたけどねぇ。切れ味鋭い権力を手にしてビビって尻込みしてしまう優しい人だったんだと思う(ビビる前に一人くらい言うことを聞かないやつを刺したらどうかねと思っていたら,死刑囚を二人ばかり吊り下げてくれた。どういう神経してるんだろうか,この人)。でも,官僚に対して鬼になれない政治家なんて,国家を不幸にする元凶ではなかろうか。アンタ,選挙で選ばれたんですよ。いまから考えると,千葉さんこそがいまの菅政権の不作為体質を体現していたわけである。だから,先きの参院選で落とされた。国民の選択はホント,シビアなんだと今更ながら感心する。民主党は,現職閣僚だった千葉景子が無惨な敗北を喫したことを,もっと象徴的に,重大に捉えるべきである。なのに,そんな人をいまだに政府の諮問検討会議の取纏めに据えている。優しい人たち。

もうひとつ。この「検察の在り方検討会議」に対して私がどうも期待をもてないのは,検察の制度の問題もあるかも知れないけれども,その尻馬に乗ってあることないことを書き立てる大新聞の無責任体質こそが,じつは最大の問題,日本の政治風土が高められないガンではなかろうかと思うからである。

そうはいっても,委員には,オウム・ウォッチャーとしてかつて引っ張りだこだった江川紹子さん(この人の問題意識には敬服させられることが多い)や,小沢さん疑惑を巡って公設秘書/石川議員逮捕に踏み切った検察特捜部に対し実に見識の高い批判を加えた郷原信郎さんが名を連ねていて,少しは実のある議論がなされるような気もする。「ニコニコ動画」あたりがこの会議内容を放映してくれないかと期待しているんである。

ぷなぁ,ぷなぁ。

リア充

歳をとればとるほど世の中がわからなくなって行く。最近それが心に痛い。

独身女性『彼氏いない』7割=半数が3年以上交際なし—電通総研』という記事を読んだ。「恋愛に消極的な『草食系』を自覚する男女が6割を占める中,互いに相手の誘いを待つ受け身の人が多いことも原因と分析している。[ ... ] 結婚の条件(複数回答)では『信頼できる』(68。0%),『価値観が近い』(64。1%),『安心できる』(61。4%)が上位を占めた。一方,かつて『3高』としてもてはやされた『高年収』(15。1%),『高身長』(11。1%),『高学歴』(4。8%)は,いずれも下位に沈んだ」— だそうである。

いいことじゃないですか。私の世代よりいまの若者のほうが確実に精神性が高い。慎み深い。「三高」(カネ,カラダ,ステータス)よりも「人間性」への指向が垣間見えて。そうはいってもやはり,テレビドラマ『ブザービート』に出て来たような草食男子・草食女子が多いというのはホント驚く。育ちがいいんですね。これらの子弟をお育てになった親御さんのお上品な躾けの賜物でしょう。草食系女子大好き。腐女子も大好き。AKB も大好き。うちのガキどもは,困ったことに,下品な親の影響なのか,どうも下品な肉食系である。そう,私は世の草食系人間を食って生きて行けと教えているんである。冗談ですよ。

でも,なんかおかしい。「三高」も芸がないけど,「信頼できる」? 「価値観が近い」? なんでこんなに優等生なんだろうか。はっきり言って,怖い。どちらかというと,「三高」なんかは条件に上げるにも愚かしい「当たり前の前提」であって,しかもこの理想がほぼ幻想に過ぎないことにどうにもガマンならずに不満のうちにいろいろ理由を付けて孤独を引きずっている,というのではないか。さらに,「信頼できる」,「価値観が近い」というのもどうも何を意味しているかも覚束ない,と自分でじつはわかっているのではないか。「現実」を前にして「こんなんじゃない」とつぶやいている若者たちの姿を —「現実」と「理想」との間で逡巡するばかりで前に進めない姿を,私はこの記事から想像してしまうのである。これこそがこの記事の意味するところなのではないか。もちろん,これは私の勝手な想像。

それにしても,「23〜49歳の独身女性」の 7 割,そしてそのうちの半数が 3 年以上男性と交際がない,なんてにわかには信じられない。質問の仕方を間違えていないか? 彼女たちは何によって満たされているんでしょうか。仕事? 勉強? 趣味? クラブ活動? まさかペットだってか? それもよいだろう。でも,エッチ抜きだとしたら可哀相のひとことしかない。エロビデオを観てひとりエッチするから別に困らない,ということなら,ホント末期的に思われる。いくらなんでも,そんなことないでしょう。

最近「リア充」というコトバが流行っている。リアルの生活における充実。ところで「リア充」って,これ,どういうことなんだろうか。「リアルが充実」の「リアル」って何だ? 金に不自由しないということでなければ,「エッチでも満たされている」としか聞こえない私は,ただの腐男子でしかないのか(私は極めてまっとうなサラリーマン,社会人を自認しているのだが)。「リア充」の流行は,つまり「エッチ」のない若者が多いということを示す,と私は解釈する。そして,これは上記の記事で指摘されている「草食系」の増殖とも相関する。最近の若い人たちはホント真面目で,皮肉抜きに可哀相,ということになる。これは違うのだろうか。もし違うとしたら,「現実」に対する表象においてまったく意思疎通ができない(若者の言う「リアル」と私の認識する「現実」とはまったく異なる)ということになりそうである。

私は「リア充」しているか。否であるように思う。会社の仕事は苦渋に満ちている。一方,余暇は空想的小説本を読んだり,レコードを聴いたり,エロ映画を観たり,世の Web サイトを覗いてバカ・ブログを書き散らしたり,誰の役にも立たないプログラムを書いたり,... ま,そんなアホみたいな楽しみに血道をあげるばかりである。仕事と家族の日常を除けば,実社会とのコンタクトの実に薄い毎日である。むしろリアルならぬヴァーチャルな世界にどっぷり浸かっているともいえる。私はリアルよりもヴァーチャルのほうがどうも好きのようである。だから何? 私は「リア充」の,充実しているべきというリアルの価値がさっぱりわからない。むしろリアルとヴァーチャルとをよく見比べて,そこから何が立ち現われるか,ということにこそ人生の意味を感じている。

ここいらで

今日,会社の指示する人間ドックに行って来た。横浜・関内,横浜スタジアム一塁側裏手すぐにある神奈川県予防医学協会。ここで受診するのは二回目。かつては,会社事務所に近い新橋の慈恵医科大学病院で受診していたが,昨年ふと家に近いこの横浜の病院を指定したところ,検査後に仕出し弁当が出て来るのに味をしめて,今回もこちらを選択。

いつもながら,胃のX線検査で飲まされるバリウムは,あとがユウウツである。下剤を飲んで下から何回もブッ放しているのだが,腹のなかのしこり感,あのわざとらしい香料の後味が失せない。この検査では,検査技師の言葉のまにまに機械の上でくるくる回らさせられたりして,まるでホイールで必死こいて空吹かししているハムスターになったような孤独に打ち拉がれる。
 

* * *

横浜,川崎はいま,来る APEC に向けて警戒体勢がなかなか凄いことになりつつある。病院からの帰りに川崎駅に寄ったら,香川県警のワッペンを着けたおまわりさんまで巡回していた。APEC 成功に掛ける政府の意気込みが伝わって来る。

このところ中国との関係が大いに縺れ,漁船衝突のビデオが国会で限定公開され,再度問題が蒸し返されている。そこにロシア大統領の北方領土訪問で追い打ちを掛けられ,もとより不作為の菅政権は,いずれの対応にも首を傾げさせられるような体たらく。実行支配している尖閣諸島については何もできず中国にやられっ放し,実行支配されている北方領土については駐日大使を呼びつけ怒鳴りつけても(これは中国に対してやるべきことじゃないの?)ロシアにいなされっ放し。XXな前原の行動でロシアが本気で怒らなかっただけ菅首相は運がよかったと思わなければならないところである。日本の政治家は口先だけだということをロシアはよくわかっているようである。

この硬軟の使い分けにおいてむちゃくちゃな菅政権外交のヘタレぶりは,マスコミからも攻められっぱなしである。私は大いに面白がって観ているのである。ここいらで,北朝鮮がまたぞろ核実験でもやろうものなら(やるとはとても思えないけど),外交無能の烙印を拭えなくなり,菅首相はイラ菅を通り越して正気を喪失してしまうんじゃないだろうか。

さて来る APEC。ここでも菅・前原コンビが中国との駆け引きで無様な「反応」(無意思なのだから)をまき散らすだろうことは必至(というか野球やサッカーが終わろうとしているいま,これこそ見物であって楽しみなんである)。公安警察外事部の国際テロ情報がインターネットに曝されるなんていう徹頭徹尾恥ずかしい事件(この言葉の本当の意味での「国辱」)も起こっていて,情報・リスクに対する日本政府の管理能力が地に落ちたことも世界に知れ渡ってしまった。この事件を反日勢力の陰謀なんて言うバカがいるのも,ホント面白い。そんなこんなで APEC もうまく行きそうにない。APEC が仮に失敗の印象をマスコミに焚き付けられると,それは自己保身能力の高い菅内閣にとってもちょっと深い傷になるかも。

ここいらで,小沢さんをさっさとブタ箱にぶちこんで,菅さんは支持率を回復しなくちゃ。でも,前原さんのホリエモン偽メール事件=拭いようのない汚点(前原さんは京都大学卒の頭のよい人のはずなのに,偽メール事件ただひとつで彼は私のなかでは「頭ごなしの浅はかなオコチャマ政治家」の代表的存在になってしまいました)のように,子供のような信じやすさで他人の受け売りを行ってしまうようなことだけはやめてほしいと思います。
 

P.S.

それにしてもロシアの今回の行動は,もう日本には何の未練もない,というように見える。日本より中国と仲良くしていれば経済的にも潤うと判断したようである。90 年代後半における日本へのロシアの大きな譲歩はもう期待できないのかも知れない。小泉政権以降の対露外交の無策のおかげで,ここへ来て中国をロシアとの友好関係で地政学的に牽制するという外交は完全につぶされた感がある。鳩山さんの努力も無に帰したのだろうか。日本はアジアでは米国と心中することに決めたらしい。中国に国債というキンタマを握られている米国には結局期待するような役割は果たせないと思われるのに。今後ロシアは日本に対してタカ派的姿勢を強めるのではなかろうか。

昨日,ロシアの LaTeX ユーザ・メーリングリスト CyrTeX-ru に,Хартия (Khartiya) 及び Эвристика (Heuristica) キリルフォントの新しいバージョンがリリースされたとの投稿があった(#9285: "Новые версии шрифтов Хартия и Эвристика" posted by Андрей Панов)。私はこのフォントを使ったことがなかった。ダウンロードして Mac OS X Snow Leopard 上の ptexlive で使用してみた。そのメモをしるしておく。

Хартия, Эвристика フォントの配布アーカイブは OpenType フォントを含むだけで,LaTeX で使うためのリソースを添付してはいない。すなわち,.fd (フォント定義ファイル), .tfm (tfm フォントファイル), .map (マップファイル), .sty (スタイルファイル) などの各種ファイルは,ユーザが自分で準備しなければならない。しかし,LaTeX コミュニティにはそのための便利なツールが用意されている。fontools パッケージがそれである。CTAN: fonts/utilities/fontools/ から入手可能である。autoinst は fontools プログラム群のフロントエンドとして各種 LaTeX リソースを一操作で生成してくれるプログラムである。

fontools は ptexlive ならはじめからインストールされている。もし,自分のシステムに組込まれていなければ,アーカイブを取って来て,bin/ ディレクトリ下にある perl プログラムをパスの通ったところにコピーすればよい(実行権限が付加されているか確認のこと)。fontools は Eddie Kohler 氏による LCDF TypeTools (otftotfm プログラム) を前提とするので,こちらを先にインストールしておく。ptexlive ならばこちらもすでに導入済みのはずである。これらのツールは W32TeX 用のアーカイブも用意されていると思う。

上記ツールの組込みが完了していれば,autoinst を用いたフォントインストールは次のように行う。

まず Хартия, Эвристика フォントパッケージをダウンロードする。それぞれ http://code.google.com/p/khartiya/, http://code.google.com/p/evristika/ から,khartiya-otf-0.2.tar.xz, heuristica-otf-0.3.tar.xz を取得する。その後,xz, tar で解凍する。ここでは $HOME/tmp/{khartiya, heuristica} に展開するものとしている。

% mkdir -p ~/tmp/{khartiya, heuristica}
% xz -dc ~/Downloads/khartiya-otf-0.2.tar.xz | tar xvf - -C ~/tmp/khartiya
% xz -dc ~/Downloads/heuristica-otf-0.3.tar.xz | tar xvf - -C ~/tmp/heuristica

それぞれのディレクトリにおいて autoinst を実行する。キリルフォントなので,T2A エンコーディングを指定する。

% cd ~/tmp/khartiya
% autoinst --encoding=T2A *.otf
% cd ../heuristica 
% autoinst --encoding=T2A *.otf

これが終了すると,それぞれのディレクトリに .sty, .map, .fd ファイルが生成されているはずである。そして同時に $HOME/.texlive2009/texmf-var/fonts/.../lcdftools/ 下に Type1 フォント,tfm フォント,vf フォント,.enc エンコーディングファイルといった LaTeX 用リソースが生成されているはずである。この段階で, autoinst を実行したユーザは .sty, .map, .fd ファイルを参照できるところなら LaTeX でこれらフォントを使ったタイプセットが可能になる。当該ユーザ以外にも LaTeX システム全体で使えるようにするため,次に,これらのリソースを TeX ツリーにコピーし,さらにマップ登録を行う。以下のオペレーション中の $TEXDIR は,インストールしたい TeX ツリーのトップディレクトリ(/usr/local/texlive/texmf-local 等)に読み替えていただきたい。

% cd ~/.texlive2009/texmf-var/
% find . -name lcdftools | xargs tar zcvf ~/tmpfonts.tar.gz
[ 自動生成されたリソース一式を "lcdftools" ディレクトリ名で探索し,抽出 ]
% su -m
# cd $TEXDIR
[ $TEXDIR は /usr/local/texlive/texmf-local 等に読み替えること ]
# tar zxvf ~/tmpfonts.tar.gz
# mkdir -p ./{fonts/map/dvips,tex/latex}/lcdftools/
# cp ~/tmp/khartiya/Khartiya.map ./fonts/map/dvips/lcdftools/
# cp ~/tmp/heuristica/Heuristica.map ./fonts/map/dvips/lcdftools/
# cp ~/tmp/khartiya/*.{fd,sty} ./tex/latex/lcdftools/
# cp ~/tmp/heuristica/*.{fd,sty} ./tex/latex/lcdftools/
# mktexlsr
# updmap-sys --nomkmap --enable Map=Khartiya.map
# updmap-sys --enable Map=Heuristica.map

以上で導入は終わりである。今回のような方法で OpenType フォントを LaTeX で手軽に使うことができると思う。ただし,日本語フォントへの適用は,jvf 等の関係で不可ではないかと思う。

Хартия, Эвристика フォントで LaTeX 文書を組むには,プリアンブルにそれぞれ \usepackage{Khartiya}, \usepackage{Heuristica} を指定する。あとは通常のロシア語のためのパッケージ指定を行えばよい。サンプルを以下に示す。このサンプルでは両方のフォントを使用するため,ファミリ切替え用独自マクロを定義している。

% -*- coding: utf-8; -*-
% Шрифты Хартия, Эвристика 
\documentclass[b5paper]{article}
\usepackage[T2A, T1]{fontenc}
\usepackage[utf8x]{inputenc}
\usepackage[russian]{babel}
\usepackage{Khartiya}%   Хартия fonts
\usepackage{Heuristica}% Эвристика fonts
% macros for change family
\def\famkhartiya{\fontfamily{Khartiya-TLF}\selectfont}%
\def\famheuristica{\fontfamily{Heuristica-TLF}\selectfont}%
\setlength{\textwidth}{240pt}
\begin{document}
\centering{\large Russian autoinst test}
 
\vspace{2em}
\famkhartiya
\noindent Хартия Khartiya
\begin{verse}
Ты проходишь без улыбки,\\
Опустившая ресницы,\\
И во мраке над собором\\
Золотятся купола. 
\end{verse}
\hfill{\it\famkhartiya Александр Блок}
 
\vspace{1.5em}
\famheuristica
\noindent Эвристика Heuristica
\begin{verse}
Ты проходишь без улыбки,\\
Опустившая ресницы,\\
И во мраке над собором\\
Золотятся купола. 
\end{verse}
\hfill{\it Александр Блок}
\end{document}

組版結果は以下のとおり。原稿: autoinst-test.tex, 結果 PDF: autoinst-test.pdf も掲載しておく。両フォントの違いはわかりにくいかも知れない。Хартия は,д と л の形に特徴がある。

autoinst-test.png

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ISAO YASUDA。システムエンジニア。神奈川県在住。昭和 30 年代を懐かしむオヤジ。ロシアに興味があります。
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