2010年12月Archives

大掃除

今日は年末恒例,我が家の大掃除。リビングまわりはテレビが来た時にやったので,今日の私の担当は妻の使っているパソコン周辺。家族はパソコンやオーディオ関係はヘタして壊すとパパが怒るというので,まったく掃除をしない。私は私で暢気な性格なので,パソコンまわりはひどい状態になる。

先日,妻の Windows PC,プリンタが壊れてしまい,その始末もかねて整理・清掃をした。PC ラックの後ろ側はケーブルが錯綜して,うんざりさせられる。このサイトを設置しているサーバなど,すべて電源を落として,ほこりを払い雑巾できれいにした。EIZO 製の 2 台のモニタなど,古色蒼然とした機械には,ほこりがたまりまくって,清掃中くしゃみが止らなかった。

壊れたプリンタは,妻が内職で必要な A3 カラー印刷ができ,FreeBSD Ghostscript ドライバが対応していた一品として選んだのだが,年賀状を印刷するくらいでお陀仏になってしまったものである。処分。

妻の使っていた PC は私が組み立てたもので,電源が入らなくなってしまっていた。そのため,Linux で遊ぶために捨て置いてあったいま一台の古い PC-AT マシン (JCS 製 Vintage Pentium 1GHz) を,今は使っている。こいつもディスク容量が不足気味になっているので,HDD くらいは再利用できるだろうと思い,分解して内臓を取り出すことにした。Matrox Millenium G200 Video, Adaptec 2940 SCSI, Gigabyte ATX Mother board, Quantum HDD, Hitachi HDD など,アキバのショップで仕入れた懐かしいバルク品が出て来た。かつては FreeBSD を動かすためにパーツを綿密に選んで自前で組み立てるのが常だったが,もうそんな気合いはとても出ない。PC を自分で組み立てるなんておそらく二度としないだろう。

HDD だけは Vintage マシンに増設してみようと考えたけれども,Vintage 筐体を開くとすでに EIDE HDD が 2 台付いていた。昔の IDE って 3 台目の接続はアウトじゃなかったかなどと,不安になって来た。5 インチベイへの搭載も狭苦しくて入りそうもない。データシート(バルク HDD のジャンパー設定説明書)もどこにあるのかもわからない。256 MB 133 SIMM の流用も,メモリは相性が極めてデリケートなので,危険すぎる。やめ。AMD Athlon 1GHz プロセッサともども,こいつらも全部処分。

というわけで取り出した贓物を,クリスマスプレゼントにもらったマトリョーシカ,リラックマとともに記念撮影。
 

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Xmas Tree

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クリスマスプレゼント

クリスマスプレゼントを家族で交換した。これはとてもよいことである。子供たちからは,部屋着をもらった。普段,私がまったく衣類に関心を示さないからだという。そして,リラックマのマスコット,マトリョーシカの小物入れ。

妻からは,最近私が芭蕉の俳句を調べているからか,俳句の本を二冊。とくに俳句教養講座第二巻は,五七五という定型の意義,切れ字の考察など,俳句の「詩」としての本性と根本から向き合う論考を含んでいて面白そうである。山本健吉による鑑賞手引書風歳時記もほしい一冊だった。
 

俳句教養講座 第二巻  俳句の詩学・美学
片山由美子・谷地快一・筑紫磐井・宮脇真彦 編
角川学芸出版
 

以下は私が子供たちにあげた品物。
 

これは伝説的ロックバンド,キング・クリムゾンの第四作 Islands。いきものがかりなどの JPOP が大好きの息子に,私の青春時代の幻影を少しは知らしめてやろうと思った。
 

これは歴史好きの息子に,「学」というものがどういうものか少しは押し付けてやろうと思って選んだ本。
 

The Remix
Lady Gaga
Universal Import (2010-05-11)

レディー・ガガは娘のお気に入り。とはいえ,こんな過激なジャケットの CD を娘に与えるのもいかがなものか。
 

ショパンの手稿譜 (ヴィレッジブックス)
ジェフリー ・ディーヴァー他
ヴィレッジブックス

あと少ししか残すところがないけれども,今年はショパン生誕 200 周年。そのあやかり作品のようなミステリーを。もう少し硬い本も考えたんだけどどーせ読まねぇなら,やっぱり楽しめる本ということで。そのじつ,「あとでお父さんにも貸してね」というわけである。
 

Virgin's Lament
B. Fink (MS), G. Antonini (Dir),
Il giardino armonico.
Decca Import (2009-04-20)

これは妻への一品。英国 L'Oiseau-Lyre レーベルの古楽・宗教曲 CD。あと,サボテンを一鉢,妻に贈った。最近サボテンを飾るのが流行っているらしい。就職難・不況感で若者が極度の辛抱を強いられるこのご時世,微々たる水分で耐え忍ぶその様がいじらしい共感を呼んでいるに違いない。

誕生日・Xmas, Русская Икона

今日は今上陛下の御誕生日。うちの大学一年になる息子も今日が誕生日。可哀相に,誕生日とクリスマスが近接しているために,お祝いはいつも同時になってしまい,本人は少し損をした気になっているのかも知れない。

とういうわけで今夜は,これからお祝い,プレゼント交換をすることになっている。ところが,肝心の息子はこれからアルバイト。妻,娘と私の三人だけで川崎駅近くで焼き肉を食いに行くことになった。明日か明後日に家族皆でケーキでも食うか。

昨日,仕事の帰りに家族へのプレゼントを仕入れた。いつものように本,レコード。芸がないが,子供たちが自分ではまず買わないだろうものを選んだ。ラッピングは昨年買ったものが残っているはずだと思ったが,今日午,包装しようと探したけどどこにしまったのかまったく思い出せず。探すのをあきらめて,仕入れた Tower Records と丸善の袋を使うという体たらく。自作ロゴを印刷したシールを貼って取り繕った。

妻が来年のカレンダーを買って来てくれた。勤務先出版社のすぐ近くにあるナウカ神保町店で,Русская Икона (『ロシアのイコン』) を見つけて来たんである。Благовещение, XVII в. (『受胎告知』, 17 世紀),Андрей Рублев の描いた Сретение (『ハリストス迎接』, 1399 頃) など,美しいイコンを集めた 2011 カレンダーである。ロシアの祝日やロシア正教の聖日が載っている。

そんなわけで,友人の皆様,クリスマス,来る新年をお喜び申し上げます。イコンにちなんで教会スラヴ語風メッセージをお送りします。LaTeX OldSlav 教会スラヴ語パッケージで組んで,Ghostscript で EPS アウトラインを取ってから Adobe Illustrator CS で jpeg にしました。

% eplatex xmas.tex
% pdvips -Ppdf -E -D 10000 xmas.dvi -o tmp.eps
% gs -dNOPAUSE -dBATCH -sDEVICE=epswrite -r10000 -sOutputFile=xmas.eps tmp.eps
 

2010-xmas.png
 

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ロンドン在住のロシアの作曲家 D. Smirnov が Wikilivres に松尾芭蕉俳句のロシア語訳のサイトを開設した: Хайку Басё - Wikilivres。彼は 2003 年に芭蕉俳句に基づく室内歌曲集 «Грёзы скитаний» Op. 140 (『夢は枯れのを』) を作曲したあたりから,日本語を勉強し自力で原典から芭蕉に取り組むようになったようである。

さしあたり寛文時代の初期の句が公開されているけれども,目次をみると彼が全句制覇を目論んでいることが知れる。芭蕉作品のロシア語訳は Вера Маркова によるものが有名だが,全句をカバーするものはこれまで出ていないはずである。

じつはこのプロジェクトで私は,日本語の解釈について確認したり,日本の文献の情報で注釈を記したり,補足的なお手伝いをしている。いちおう共同プロジェクトということになっている。私は日本人研究者の成果を横流ししているだけなので,何か主体的な意見を表明しているわけではさらさらないのだけれど,Smirnov はサイトの序文のなかで私のことを持ち上げてくれている。

ということは,私も芭蕉全句について,これから少しずつ研究しつつ,ロシア語で注釈をしなければならないということになるわけである。私の書いた恥ずかしい,ひでぇロシア語を,本サイトに掲載する段階で D. Smirnov がきちんとしたロシア語に訂正してくれているのは論を俟たない。私も,ロシア語の勉強も兼ねて,芭蕉理解を深めたいと思っている。

興味のある方はぜひご覧ください: Хайку Басё - Wikilivres

有川浩『阪急電車』

娘がこれ面白いらしいよというので,有川浩『阪急電車』を Amazon から取り寄せた。まず,娘に与えたら面白くてすぐ読んでしまったという。引き続き私も読んだ。

朱川湊の『かたみ歌』は,『アカシア商店街』という架空の旧き良きコミュニティを巡って,そこに暮らす人々のいじらしい交歓を描いて感動的だった。有川浩の本作品も,阪急電車という地域住民の共通の日常空間を舞台に設定したところ,『かたみ歌』に近似した趣向を感じた。突出した才能のないまったく一般の人々だけが登場する日常的風景に人間の数奇な関り合いを滲み出させるところ,人生の爽快感が得られ,とてもハッピーな気持ちにさせてくれる作品である。この点では,この前観た映画『運命じゃない人』に近い味わいがあった。

私は大阪生まれではあるが,住吉区,河内・松原市で育ったため,阪急電車は数えるくらいしか利用したことがない。それでも,あの葡萄茶色の古風な車両は一種独特の時代錯誤でこういう小説のような次元スリップを幻想させてくれるところがある — それはよくわかるのである。高校時代の英語の恩師が,この作品に出て来る阪急今津線沿線にある関西学院大学出身だったこともあり,いっしょに関学キャンパス(「関学」というのが関西学院大学の愛称だった)をぶらぶら歩いたことがある。当時,関学はアメリカン・フットボールにおいて京大としのぎを削る関西のメッカであった。野球,サッカー,ラグビーじゃなくアメフト。こういう点こそ,当時の私にはハイカラに見えたのである。そのときの印象で,阪急電車は大阪では珍しい学園都市風のハイカラな空間を走っている(やはり神戸を擁する兵庫県は,大阪とは全然違うのである)というイメージが私のなかに出来上がっている。阪神電鉄よりも六甲山岳部よりを走る阪急沿線は,宝塚あり,夙川あり,仁川あり,と西宮市のハイソな山の手地域を抱えている。一歩離れると尼崎のドヤ街などの都市空間の吹きだまりにも面していて,これは横浜,大倉山,日吉,田園調布,多摩川園,自由が丘,代官山,渋谷を通過するハイソな東急東横線からホンの少し南下すると,わが川崎市幸区・川崎区の工場・ビンボーアパート・風俗・歓楽地帯が広がるのと似たようなものである。

鉄道は地域住民の人情・風情がこびり付いているものである。この『阪急電車』を読んで,慎ましやかでちょっとハイソな人々の heart-warming な好篇をいただいたわけだが,誰かが南武線か鶴見線を舞台にして川崎の人々を活写してくれないものか,という思いも募って来たのである。
 

Wooo 来る

今日,日立製フルハイヴィジョンテレビ Wooo XP500CS 37V が届いた。町内の日立チェーンストールで 11 月末,エコポイント減額直前ギリギリに駆け込みで購入したんである。チェーンストール限定のプレミアムモデルである。37 型の地デジ対応高画質テレビがやって来て,子供たちは大喜び。彼らの関心は高画質,同時間帯の 2 番組同時録画,番組表からの予約録画。私はというと DLNA でネットワーク越しに PC からこのテレビを見ること。放送大学の録画ができるようになったのが嬉しい。早速子供たちが録画予約を詰め込む延長で,私も亀山郁夫先生によるドストエフスキイの放送大学講義を予約した。

日立チェーンストールは要するに昔ながらのメーカー直結の特約店である。ヨドバシカメラなどの大型量販店が当たり前の今日,こうした古典的商流を貫くいわゆる電気屋さんはあんまり元気がないのではないかと思う。それでも,地元密着が命であって,電気工事・据付け・調整・アフターサービス・使い方説明など何から何まで面倒を見てくれるので,固定客がいる。私の実家も近所付合いで町内の Panasonic 特約店で家電品を購入するのが常になっている。息子である私がどんなに頼んでも,父は私の会社の製品を買おうとしない。商品以上に,ご近所の人間関係が決定的意味をもっているのである。この夏,父が入院してしまった関係で,母の判断でようやくわが社の冷蔵庫を買ってくれたのである。社販で調達したこの冷蔵庫に,母は大いに満足したようである。

今回,私も社販を利用することにして,はじめて近所のチェーンストールを訪れた。店の親父はもともと同じ会社の社員だったこともあり,コーヒーを入れてくれ,私は 1 時間も話し込んでしまった。隣の婆さんが 1 月に亡くなったこと,お向かいの W さんが買う買うと言いながら一向に地デジに切替えないこと,などなどご近所の話で盛り上がった。私が購入しようとしていたモデルの在庫を確認し,すぐ押さえてくれた。「いま(11 月)はテレビが飛ぶように出てどの店も大忙しですよ。工場も物流も悲鳴上げてます。量販店ならいま注文しても多分来年の 2 月くらいにならないとお家に届かないでしょうけど,このモデルは社販プレミアムなんで 12 月中にはなんとかお届けできると思いますよ,紅白は新しいテレビで見られます。お支払いはいつでもいいですよ」と,頼もしかった。おかげでボーナスが出てからという柔軟な支払いができた。

Wooo いいっすよ。小雪の Panasonic Viera も日立の液晶 IPS パネルを使っているそうである。特許の関係でカセット HDD は Wooo しか搭載できないらしい。篠原涼子のソニー Bravia は韓国のサムスン製のパネルで,日立に比べると質が落ちるんである。吉永小百合のシャープは 4 色パネルが売り物だが,経年劣化でそのうち画質が黄ばんで来るそうである。日立 Wooo のイメージキャラクターは誰だったっけ? 日立はやはり商売がヘタである。おかげでシェアはいまいち。でも品質はピカイチ。近くまったく新しい技術で 3D を出すらしい。
 

20101219-wooo.png

URL encode in LaTeX

LaTeX でロシア語テクストを含む URL を出力しなければならないとき,url パッケージの \url 命令だと,キリル文字が出力できない。hyperref パッケージの \href{URL}{text} 命令を使って,text 部にロシア語テクストを記述すれば,これが可能となる。ところが,後者の場合でも,URL 部にロシア語 URL をそのまま指定しても,PDF にした際にそのリンクから当該リソースに飛んでくれない。この URL 部にはエンコード形式,つまり,ロシア文字を 1 オクテットずつ %xx の十六進数とした形式を指定しておかなければならないようである。

URL エンコードを行うツールはあちこちに転がっていて,Web なら http://www.tagindex.com/tool/url.html などの便利なサイトがある。Emacs 用の Elisp も探せばあるかも知れない。でも,LaTeX で,この URL エンコードを埋め込むとなると,% 文字が含まれるため,これをいちいちエスケープする手間が別途発生し,これまた面倒である。そこで,これくらいならツールを探す時間の間に出来てしまうと思い,自前で LaTeX 向け UTF-8 前提 URL エンコード・ツールを作ってみた。Perl である。U+0080 以上の UTF-8 文字を URL エンコードするので,ロシア語以外に日本語,ドイツ語などを含む URL にも適用できるはずである。同じ必要に駆られる方もいらっしゃると思うので,以下にそのコードを掲載しておく。ここにも置いておくので,ダウンロードして使っていただいてよい(無保証)。

#!/usr/bin/perl -w
# -*- coding: utf-8; mode: cperl; -*-
#  URL encoding: convert chars over U+0080 to format %hex.
#  Usage: urlenc [ -l ] < stdin (url text)
use strict;
use utf8;
use Getopt::Std;    # command line processing
use File::Basename; # get file basename
 
# command line
my %opts = ('l' => 0);
Getopt::Std::getopts('l', \%opts) ||
    die "Usage: " . basename($0) .
    " [ -l ] \< (stdin)\n  -l: insert \\ before % for LaTeX\n";
my $sfx = "%"; $sfx = "\\" . $sfx if ($opts{'l'});
 
# hex format
while (<STDIN>) {
    utf8::decode($_);
    my $enc = "";
    foreach my $chr (split(//, $_)) {
        if ($chr ge "\x{0080}") {
            utf8::encode($chr);
            foreach my $bchr (split(//, $chr)) {
                $enc .= $sfx . sprintf("%x", ord($bchr));
            }
        } else {
            $enc .= $chr;
        }
    }
    print $enc;
}

Perl コードはこれだけである。標準入力から読んだ URL 文字列のうち U+0080 以上を %xx 形式に変換して,標準出力に書き出す。オプション -l を指定すると LaTeX 向けに \%xx とエスケープした形で出力する。このプログラムを urlenc と名付けて,パスの通ったところにコピーして利用する。Mac OS X ターミナルでの実行例を以下に示す。

url-term.png

Emacs から利用する場合は,以下の内容を .emacs に記述し,関数定義を C-x C-e で Emacs に認識させるか,Emacs を再起動すれば,urlencode 命令が利用可能となる。ウラで上記 urlenc プログラムが動くので先きにこれを組込んでおくこと。urlenc の絶対パスは利用者の環境に応じて変更する必要がある。LaTeX 原稿において変換したいテクストをリージョン設定し,M-x urlencode RTN とすれば,当該リージョンが URL エンコード変換される。Emacs の set-default-coding-systems'utf-8 にセットしておかなければならない。

;;
;; URL encoding for LaTeX
;;
(set-default-coding-systems 'utf-8) ;; すでに設定されていれば不要
;;
(defun urlencode (start end)
  "URL encoding for LaTeX"
  (interactive "r")
  (call-process-region
   start end
   "/usr/local/bin/urlenc" ;; urlenc の絶対パスを指定
   t (list t nil) nil
   "-l") ;; urlenc LaTeX 用オプション
  )

Emacs 上での変換の様子を以下に示す。

url-emacs.png

Wikileaks

Wikikeaks は,インターネットで機密文書を公開することで世界を震撼させた。その代表ジュリアン・アサンジュが「強姦容疑」で逮捕された。欧米ではこの話題で持ち切りであるらしい。

アサンジュ氏は欧米のマスコミと協議したうえで,マスコミと同時に機密文書を公開したそうである。そして機密保持に関る罪ではなく「強姦容疑」で逮捕。権力者たちが権力に歯向かう個人を,人間性を疑われるような罪を被せることにより,陥れる典型的な例である。尖閣諸島漁船衝突ビデオを晒した sengoku38 もこれと同じ道を辿るものと(つまり sengoku38 は公務員法違反ではなく痴漢容疑か仮想敵への機密漏洩で世の晒しものになると)私は思っていたが,優しい政府に外されてしまった。

暴露者が匿名でこそこそネットカフェから機密情報(というより公開されると政府が困る情報)を晒しても無罪放免となり,マスコミ・世間が市川海老蔵のケンカなんぞに大騒ぎしている日本と,暴露者が堂々と機密暴露を敢行しそのために明らかな濡れ衣を着せられて束縛され,マスコミ・世間が国家機密に関る罪と罰に侃々諤々の欧米。この違いはいったいなんなのか。日本人は政治ゴシップ・芸能ネタさえあれば幸せに暮らせる平和な国民なんだということだろう。
 

P.S.

小沢一郎の国会でのつるし上げに急ぐ与野党・世論も,まさに海老蔵ネタと同じレベルである。自分がなにも悪をなしていない人が「お前は ... の容疑が掛けられている。身の潔白を証明しろ。説明責任を果たせ」と言われたって,身に覚えのないことでどうして「説明」しなくちゃならないのか? いわんや検察は何の証拠も見つけられなかったのだ。そもそも何の容疑だったっけ? なのに国会・マスコミはこんなことで大騒ぎしているんである。こういうのを「イジメ」だと認識できない人が世の大半のようである。小沢一郎に着いた谷亮子は,いまパンピー女性からもっとも嫌われる女性になったらしい。イジメられる側に着くヤツもまたイジメを受けるわけである。ホントくだらない。イジメ根性の染み付いたただの「政治ゴシップ・芸能ネタ」好きとしか言いようがない。

ロシア重要単語 2200

久しぶりにロシア語の単語集のおさらいをした。白水社から出ている『ロシア重要単語 2200』である。著者は佐藤純一先生,木島道夫先生。本書は 1983 年の初版で,2009 年に大改訂された。改訂版が出ること自体,評価が高い証左である。私は妻が大学時代に使っていた 1983 年旧版を読んだ。ところどころに日付が書き込まれていて,妻はきちんと勉強していたわけ。感心。

単語集はどれもある程度統計的考慮の上にたって収録単語を選択しているものである。そして基本単語 2000 というのが日常生活で困らないレベルと,どこかで聞いたことがある。たった 2000 語である。私は大学時代の詰込み教育のおかげで,会社に入って 20 数年経過した現在もロシア語を読むのにそれほど苦労しない。けれども,学生時代は読むばかりで,話したり書いたりする運用スキルの訓練をないがしろにしたため,実生活に即したロシア語が情けない限りなんである。определить (定義する) などの硬い言葉はそれなりに日露・露日で出て来るのに,огурец (きゅうり) なんてのに「なんだったけかなぁ」という恥ずかしい有様。外国語の単語学習は現実世界とのかかわりで意識的に詰め込まないといけないようである。

『ロシア重要単語 2200』はアルファベット順の単語配列になっている。よってもって頻度・重要度順配列,テーマ分類(植物,コンピュータ,など)配列に比べると読み進めるに際して極めて退屈な方式になっている。「え,まだアルファヴィートの г なの?」ってな具合に,先行きが遠大に見えてしまって意欲が殺がれてしまうのだ。ま,簡単な辞書としてアクセスもできるわけだけど,記憶のための単語集なんだからそんな使い方をするとは思われず,この構成だけはもう少し考えてほしかったと思う。

それでも本書は,IPA 発音記号がきちんと示されており,語義分類(だらだら意味を並べるのではなく,使い方・語義ごとに数字を振って分ける)がなされ,すべての単語について語義に応じた例文を掲載している。巻末の語形変化パターン表も,具体的単語で総覧しておりそれ自体読むに値する。さらに,ある重要語については用法の注意事項を簡潔に記してあり,中級以上の学習者にも有用である。例えば,чтобы (...するために) には「従属文中の動詞は過去形ただし主語が一致するときは主語を略して不定形を用いる」とあり,私なんか温故知新の感銘を受けた。これらの美点は他のロシア単語集の追随を許さない。さすが辞書を編纂された先生の教育的ポリシーは一貫しているんである。

1983 年版はまだソヴィエト連邦の時代に編まれた。それを反映してか,たった 2200 余の最重要単語のなかに,社会主義体制特有の単語が大量に含まれている。軍隊用語が多いのも特徴である。пятилетия 五カ年計画, колхоз コルホーズ, комитет 委員会 (КГБ: Комитет Государственной Безопасности のそれ), райком 地区委員会, коммунизм 共産主義, буржуазия ブルジョアジー, пролетариат プロレタリアート, артиллерия 砲兵隊, снаряд 弾丸, винтовка ライフル銃, лейтенант 中尉, капитан 陸軍大尉, etc., etc., и т. д., и др. などなど。これらはすべて 2009 年新版では姿を消してしまっている。例文もまた「ソ連」してくれているんである。При социализме в управлении государством участвуют широкие массы трудящихся. (社会主義の下では国家統治には広汎な勤労大衆が参加している); Страны социализа [sic] играют всё более значительную роль в мировой экономике. (社会主義諸国は世界経済でますます重要な役割を果たしている); В классовом обществе мораль имеет классовый характер. (階級社会においては道徳は階級的性格を帯びている)。新版ではやはり,例文が差し替えられるか単語自体が収録対象から外れた。

なんで旧版のことをこうまで記すのかというと,言語も世につれ人につれというのが,ロシア語ではありありとわかって,いたく面白いからである。新版では上記のクソ面白くもない単語に代わって,артист (芸能人), компьютер (コンピュータ) など自由主義体制・情報化時代の要請に応える単語が新たに収録された。そういう意味でやはり新版のほうが学習書としての価値が高い。一方,旧版は新書サイズの二色刷になっていて,背広のポケットに入り,移動中のお勉強にも最適であった。新版は B6 変形サイズとなってしまい,ポケットには入らない。新版はここにいちばんの問題があるように思われる(CD を付録にするためにこうせざるを得なくなったのだろう)。

今回本書を通読して,学生時代の恥ずかしい思い出が蘇った。私はアタマが悪くて硬い。大学の演習でブルガーコフだったかオレーシャだったかの作品を読んでいて,Как вы себя чувствуете? なる文が出て来て,私はそれを「あなたは自分をどのように感じていらっしゃいますか?」と訳した。鬼の恩師にすかざず「あーたね,そんな日本語通じると思いますか?」とキツく言われた。そう,これは「ご気分はいかがですか」という病人に対するごくごくありふれたセリフなのに,「いかに自分を感じるか」なんて訳すと日常的レアリアがいっぺんに哲学的・倫理的形而上にすっ飛んで行ってしまう(フランス語の la petite mort を「小さな死」と訳すバカと本質的に私は同類だったのである)。私にはこの手の恥ずかしい失敗がいくつもあった。здравый смысл 健全なる知性 — アホ,古い用法でそういう訳もないことはないけど,これはたんに「常識」という意味だ。дьявольская разница 悪魔的相違 — 意味わかんねぇよ,これは「どえらい違い」ってこと。『ロシア重要単語 2200』にはまさに Как вы себя чувствуете? の例文が出ていた。言葉はやはりアタマでこねくり回すよりまずは覚えるべきものなのである。
 

最新ロシア重要単語2200
佐藤純一・木島道夫 共編
白水社

私は本書の編者・佐藤純一先生の古スラヴ語・教会スラヴ語の講義を受けたことがある。当時は日本語による教会スラヴ語教科書なんてなかったばかりか,ソ連にもよい本がなく,先生はスラヴ文献学の先進国・西ドイツで出版された書籍のプリントを学生に配って説明された。先生のロシア語・教会スラヴ語の発音にも凄いと思ったが,ドイツ語の発音も流暢で私はおったまげた。こんな人じゃないとスラヴ文献学には太刀打ちできないのかと溜め息が出たものである。

ボーナス

ボーナスが出た。去年下期は会社の業績がひどくて上期の賞与は過去最低のありさまであったが,今年持ち直したおかげで少しばかり上昇した。あぁ,家のローンが払える。地デジ・テレビもやっと買える。

でも世の中には,ボーナスそのものがまったく支給されない,あるいは現物で代替されてしまう企業もある。私の会社にはたくさんの関連会社の社員が働いていて,そのなかには,そのような企業から派遣されて来ている者もいる。同じ職場に居ながら,ボーナスの話題が飛び交うなか,我が身の不甲斐なさが思い知らされて世に悪意を抱く者だって出て来るというものである。この時期,ビルの非常階段の壁にたくさんの大穴が刻まれるという事態になる。そんなことしたって見つかればクビになるだけで世の中がちぃともよくならないのだが。総務の担当者は戦々恐々としている。このご時世,あまりに他人に無関心になってしまったせか,私も他人のことはどーでもよくなった。それが世の中だというわけである。

そんなことより,新卒者の就職率がひどい。ボーナスどころか,食って行かれない若者が街に溢れている。これこそ可哀相というものである。社会人一年生にひもじい思いをさせるのはホント可哀相である。ボーナスが出ないのに頭に来て,会社の器物破損行為に及んだり,2ちゃんねるに嫌がらせや,政府・韓国人・中国人の悪口を書き込んだりするヤツを見ても,勝手に自滅しなさい,としか思いませんが。完全失業率 5% が当たり前になって来ていて,日本が米国並になるのも時間の問題である。貧困が蔓延して,犯罪率でも米国並になるということだ。こうして国が壊れて行くということか。ヨーロッパは,失業率が米国よりもっと酷いらしいけど,国家間の助け合いの精神がある。日本は政府の外交無策のおかげで(あるいは,札束外交でしかなかったおかげで)アジアで孤立する一方で,隣国はどこも助けてくれそうもない。

私の子供たちも間違いなくこの「生存競争」に巻き込まれるだろうと思うと,ホント嫌になる。「他人のことなんて知るもんか」というのも,じつは我が身に跳ね返って来る問題だと思い知る。齧るスネがあるうちはいいけれど,早々に親子ともどもホネだけになってしまう。これで親がぶっ倒れでもしたらどうすればよいのか。こんな不安な状況じゃ子供が生まれないのも当然のように思えて来る。でも,昔の人は貧乏でもたくさん子供を生んで様々なことに耐えて暮らしていたわけである。なんとかなるさと目の前の仕事に勤しむのがあるべき姿なのかも知れない。

やばす

怖くなってきました。朝鮮半島のいざこざを巡ってアメリカと中国がやばい事態になりつつありますね。アメリカは,また体育会系共和党的強硬路線が強まりつつあるようである。

※ 付記

米韓は,こんどやりやがったら北を空爆する,とまで言っている。2012 年は金日成生誕 100 周年だそうで,北朝鮮の歴史の大きな一区切りである。そこで新たな時代の神話創造のために,2012 年に向けて大きな花火が上がるかも知れない。戦争がはじまったら,北朝鮮+中国(もしかすると+ロシア)VS 韓国+米国,よって安保条約に則り+日本となるはずだが,米国は実質的に戦場から遠いわけで,米国の一人勝ちになる。軍産複合体が大もうけし,経済上の宿敵である中国,日本,韓国の国力を同時に奪うことができる。

確定拠出年金

私の会社の退職金制度は,2001 年から,退職金の積み立ての一部を個人投資で運用させる「確定拠出年金」という仕組みになっている。この場合,積立金に対して非課税なので,その分だけ有利ということらしい。しかし退職後に手にする金を増やすも減らすも個人の責任ということなんである。この制度に変わるとき結構大騒ぎで説明会が開かれたが,私はというと,殺人的多忙のなかにあって,半分いねむりをしながらファイナンシャルプランナーの話を聞き,運用商品をテキトーに選択したままであった。そして,この 10 年間放置していたのである。その運用報告書に一度もまじめに目を通したことがなかった。

たまたま会社で確定拠出年金セミナーが開かれたので出席してみた。いま現在,日本人の平均寿命からの試算によれば,定年退職後,つまり老後に必要なカネは夫婦二人でざっと 8,000 万円もかかるという。おまけにこの老齢者社会のおかげで,65 歳から仮に年金を受け取ったとしても,この数値には 3,000 万近くも足りないらしい。その穴を退職金その他の資産で埋めなければならない。この考えてみれば当たり前のような説明を受け,この期に及んでちょっと不安になって来た。同じような説明を 2001 年にもしてくれたはずだけど,どうも私はいねむりしていたらしい。「その他の資産」— これこそ確定拠出年金の運用利回りによって天と地の違いが出て来るわけで(1, 2% の違いが 60 歳定年後に受け取る金額として数百万の差で跳ね返って来るのは,家のローンを考えればすぐわかる),いままでの己の暢気ぶりが情けなく思われて来たのである。

家に帰ってすぐさま,いまの私の運用状況を確認した。委託先銀行の自分の口座番号だけでなく,パスワードすら忘れ果てている体たらく。PC の会社用パスワード管理ファイル(その対象システムは,手足 20 本の指でもとても足りないくらい,数があるのだ)を探しまくって,ようやくそれを見つけた。当然のごとく元本割れしていた。う,もっと早く気付くべきだった。

運用商品投資の初期設定では,2001 年当時のバブル崩壊後の構造不況感が強かったので,日本の株式,国債には目もくれず,しかも元本割れを絶対起こさない定期預金系については,面白みがないとまったく選択しないでいた。つまり,私は外国株式と外国国債に全額投資していたのである。2008 年のリーマンショックで株式が大暴落したのは記憶に新しい。外国国債は堅調に推移しているが,やはりここのところの円高の影響で為替損失が相当出たに違いない。それでも株と国債に分散しておいたので,大損はしなかったようである。景気で株は乱高下がある。一方,不景気になると国債は金利が下がって株価とは逆に値段が上がるので,円高で目減りしたとはいえ株価の損失を幾許かカバーしていたようである。ま,そんなこんなでマイナス 1.4% の元本割れというわけである。

運用資金の振り分けを変えることにした。外国株式と外国国債だけじゃ危ないと思った。ここのところ再び 10,000 円台を回復した日本株式と,増える一方でいつ破綻するかと騒がれつつも海外投資家の信用がいたく高いわが国の国債とに,一部を振り替えた。これからは,一年に一遍くらいは世の中の動向を見て,少しは運用方法を考えなくちゃ。ま,また忘れて放置してしまうのが目に見えるようだけど。

私はまったくケイザイがわからず,投資にもまったく興味がない。それでも,委託先銀行がくれた,1985 年以降の日本株式,日本国債,外国株式,外国国債の価格の推移資料を見ると,外国株の乱高下が凄まじいのに比べ,日本株式は 1991 年以降上り下がりしつつも確実に下降している様が如実にわかり,これじゃ海外投資家も日本に見切りを付けたくなるよな,と情けなくなってしまった。政府はさっさと FTA を締結して日本の主要産業の国際競争力を高めないと,韓国,中国に叩き潰されちまうぞ!

日立レアアース再利用技術開発

日立製作所がレアアース再利用技術を開発し,2013 年をメドに本格的実用化を果たすと発表した(ロイター『日立がレアアース磁石のリサイクル技術開発,13年から本格稼動』)。

やっぱり日立はわが国を代表するメーカーなんである。10000 人の博士号取得技術者を抱えて「モノ作り命」の会社なんである。昨年 7000 億円もの赤字を計上して巨艦も沈みかけたかの感があったが,新幹線の英国・台湾への売り込み等,海外への事業展開を通して,また元気を取り戻しつつある。日本企業としては唯一のコングロマリット(複合企業体)であって,自社製品だけで社会インフラ(電力,産業用機械,交通機関,情報・通信,民生用電気機器,家電,高機能材料)すべてを提供することができる。たとえば,鉄道インフラが必要となれば,電気を生み出す発電所,それを送る送電施設,車両,信号から,線路を加工する機械,運行管理システム,発券システム,駅舎の電機設備,などなど,あらゆる要素を自社技術だけで実現できる組織力を有しているのである。ところが売り方がヘタクソなのか,グループ 10 兆円の売り上げに対して 1000 億円の利益も出ない,利益率 1% という信じられない経営を続けている。

電機メーカーというと,手近の家電のイメージが強いためか,ソニーや Panasonic ばかりが頭に浮かぶ人が多いと思う。けれども,コンピュータ用 HDD やネオジム磁石など,目に留まらないところでの基盤製品ではトップシェアのメーカーである。コンピュータについてもプロセッサとオペレーティングシステム,データベースマネージャ,ネットワーク機構をセットで自社開発することのできる数少ないメーカーである。なのに,どうも縁の下の力持ちに徹するあまり,実入りの悪い商売から抜け切れない体質のようである。なにしろ,何千億もの価格で受注した発電所インフラについて,タービンの故障で逆に何千億もの賠償金を電力会社に支払わされる,そんな商売が好きなんである。デジタルビデオカメラを他社に先駆けて製品化したのに,世の人はソニー,Victor か Panasonic の製品しか知らない。このレアアース再利用技術も,特許ロイヤルティについては別として,実用化の暁には,日立はおいしいところを売り方の上手なメーカーに持って行かれるだろう。それが目に見えるようである。

このレアアース再利用のように,日立の開発した基盤技術が話題になるのはじつは珍しくない。それでも,レアアース禁輸のような日本を震撼させた中国の強請外交が大いに話題になるこのいま,日立はさすがにタイムリーにやってくれました,と頼もしくなってしまうわけである。ヤクザの強請に技術をもってスマートに対抗する。これこそ技術立国日本の「成熟した」姿というものである。

こう思うにつけても,中国の軍事的脅威に「核武装せよ」などとアタマの悪いことを叫んでいるバカ右翼連中なんぞは,日本の進むべき道が何かを真剣には考えていないな,と私はまったく呆れ果ててしまう。日本が核開発を表明したとたんに,真っ先に米国を怒らせ — いったい誰が自分の飼っている犬に,暴発したら我が身をも危うくする危険物を持たせたがるだろうか —,ウランどころか海外からのあらゆる資源提供の途が絶たれて,日本が兵糧攻めに見舞われるだろうことが,こいつらにはわからないらしい。戯言を言ってないで,日立の技術者のように,手を動かして,智慧を絞って世の中のために働けというのである。

事業仕分けもいい加減・SQLite

会社でも政府予算の動向把握は欠かせない。民主党政権の特色のひとつになった事業仕分けの結果も大きな関心を呼ぶ。なにせ時間と労力を掛けて必死こいて担当者が提案していたシステム化が,あの内実も知らない素人仕分け人のつっこみに対して役人がうまく対処できなかったために,一瞬のうちに「廃止,凍結」という話になってしまう。世の官庁関係の仕事をしている人で,これまでの苦労があの数十分の議論のおかげで水泡に帰してしまったような人には,あの仕分け人を後ろからブスリとやりたくなった奴もいるんじゃなかろうか。

ま,国家事業の無駄排除のために侃々諤々議論したうえで,「無駄」と切り捨てること自体は悪いことではない。それで国税を国民生活全体にとってより有益な事業に振り向けることになるのなら,誰だって文句は言えない。もともと事業仕分けは,国税の使途において長かった自民党政権下で既得権益と化した事業,あるいは「天下り」官僚のための有名無実の事業に対する政治による裁断ではなかったか,と私は理解している。しかしいまや,ニュースでも報道されるように,すでに民主党政権となり彼ら自身が予算化したも同然の事業に,尚もつっこみを入れなければ気が済まないのは,この劇場会議,そもそも予算策定の過程に民主党がまったくコミットできていないという恥ずかしい証拠になっているだけじゃなかろうか。

10 月末に行われた事業仕分け第三弾,特別会計の個別 48 事業の仕分け結果の資料を見た。特別会計とは,受益と負担の関係を明確にするために一般会計と区別して経理を行うものである。年金,労働保険など歳入に応じた行政の歳出で成り立っているような事業がこれに相当する。ま,事業はさすがにいろいろあるんだけど,このところ収賄事件で注目していた特許特別会計に私は目がいった。特許庁関係が特別会計になっているのは,ほぼ企業から得られる特許出願料・登録料という歳入だけで審査・審判・公報活動を行う財政構造・予算で成り立っているからである。要するに自分で稼いだカネで仕事をして日本国の産業,ひいては国民に成果を還元しているわけである。

特許特別会計の平成 13 年度報告書が,情報公開法に基づき経産省サイトで閲覧できるようになっている。これを見ると,わが国の特許事業は 1,850 億円の歳入に対して歳出がなんと 950 億円であり,次年度繰越金が 900 億円近くもある。普通の会社なら利益率 100% に近い超優良企業である。それなら出願料を下げて出願人企業にもう少し還元したらどうかとも思う。しかしその一方で,なんのために存在しているのかもよくわからない政府外郭団体が無駄に税金を垂れ流す「天下り事業」と比べれば,稼いだ金の範囲で国益を創出している点で,遥かに健全な国家事業であるとも言える。

ところが,事業仕分け第三弾の結論を見ると,特許電子図書館事業は「将来的に廃止」,知的財産権教育事業は「文科省の仕事であり,廃止」,とにべもない。前者は,特許庁の審査用庁内検索システムが将来的に一般にも公開されるという背景を踏まえるとまだ納得できるのだが,後者は,じゃあ文科省にきちんと予算化させるところまでフォローしろよと言いたくなる。技術的,組織的に文科省ができないから経産省・特許庁が音頭取りをしていることをまったく理解していない。なのに,やめろと言うだけでこうしたらどうかという前向きな意見がまるでない。また,「アンタじゃなく文科省がやるべき,アンタはそれを手伝いなさい」などと省庁の縦割り構造を無視した結論を出すのは,現実的な観点において無責任ではなかろうか。

要するに,いまの事業仕分けはアラ探しばかりをする素人の無責任なつっこみにしか見えないのである。国益を考えた建設的意見がまるでない。そう考えるのは私だけではないと思う。だいたい,特別会計のような歳入と歳出の構造が明らかな国家事業にまで素人が首を突っ込むんじゃねぇ。技術立国の根本政策の実行官庁である特許庁の事業を,しかも健全な税金運用をしている特許事業を,井戸端会議的に引っ掻き回すんじゃねぇ。私はアタマに来た。私は当初の事業仕分けに対しては「政治主導」の端的な姿としてかなり好感を抱いていたが,今回の結果を見る限り,初心を忘れた素人つっこみ大会にしか思われなくなってしまった。事業仕分けはいまやただの劇場政治である。仕分ける前にきちんと予算化の段階でコミットすべきである。それはできるはずなんじゃないんでしょうか,政治主導というのだから。
 

* * *

最近,プライベートで漢詩を研究していて,misima の機能に漢詩規則分析を入れたいと思うようになった。平仄の妥当性の検証,孤平や下三連等の禁止事項のチェック,平仄に適合する詩語の検索など,漢詩を作りたいと思う人・漢詩の分析をしたい人のための支援機能である。misima の辞書を作りながら四声データも集めたので,まずはこれをもとにした平仄チェック,禁止事項チェックを行って診断結果を出力するとともに,すでにある機能と連携して \CID 形式の正字体に自動変換し,返り点命令変換を含めて,LaTeX 形式で出力するくらいはできそうである。

漢字・詩語データベースをどうするか悩んで,これまでと同じように DBM にデータを格納し Perl の連想配列で回すのがいちばんラクだと考えたのだけれども,検索機能ものちのち入れるんなら,ちょっと大げさだけど RDB にしようと思った。そこで手軽な SQLite を少し勉強することにした。SQLite は,RBMS サーバなしにライブラリだけで RDB を使う枠組みを特徴とし,ユーザ管理機能も高度なトリガー機能もないけれどもシンプルで軽い,パブリックドメインの RDB ソフトウェアである。Safari や Firefox が SQLite でブックマークなどを管理していることをいまさらながら知った。

会社の帰り,いつも行く虎ノ門の書店『書原』で本を漁った(この本屋,人文社会系の品揃えはなかなかである一方,コンピュータ関係はまったくダメである。またコミック,マンガ雑誌などまったく置いていない。よってコンビニ的風景を免れている。そのポリシーこそが私の贔屓にする所以でもある)が,SQLite の本は見当たらなかった。今日はいつもと違う道で新橋まで行こうか,とぶらぶら霞ヶ関を歩いた。日比谷公園にでも寄るか,ともふと思ったが時間が遅いのでこれはやめ。財務省と文科省の間の小道を抜け,桜田通り(国道 1 号線)を渡って霞ヶ関郵便局の辺りまで来ると,文教堂書店があった。小さい本屋だけど覗いてみたら,技術評論社刊行の『SQLite ポケットリファレンス』があった。このシリーズについてこれまで私は Perl, JavaScript, SQL, LaTeX に関する本を重宝していたので,迷わずこれをゲットした。DML の説明はあらかた普通の SQL 本と変わりがない。DB 運用に関る DDL, 端末コマンド仕様を帰りの電車で読んでイメージを理解した。
 

 

2011.1.5 付記

その後,漢詩平仄音韻分析プログラムをリリースした。SQLite3 を使った Java Servlet である。漢詩に興味のある方は『misima 漢詩平仄音韻分析(Servlet版)』をお試しください。

藤田眞作先生の新刊マクロ本

藤田眞作先生の『LaTeX2e マクロ作法』が出た。私は LaTeX の魅力に憑かれたこの 15 年,藤田先生の『LaTeX マクロの八衢(やちまた)』,『LaTeX 本作りの八衢』に大いにお世話になって来た。これらは現在の LaTeX 3 よりも古い世代の LaTeX 2.09 に準拠しており,少し古色蒼然としたきらいがあり,すでに絶版となっていた。『LaTeX2e マクロ作法』は,これら『八衢』シリーズを襲う,文字通り新しい LaTeX2e に基づく待望の LaTeX マクロ本である。

私は本屋でざっと通読したレベルであるが,二冊の『八衢』で述べられていた内容をうまく統合して,より LaTeX 流マクロ作法に重点を置いた(『八衢』はどちらかというと TeX 流ではないだろうか)わかり易い解説だと思った。総 652 頁という大著である。LaTeX マクロを究めたい人で,『八衢』シリーズを持っていない方にぜひお勧めする。

『八衢』シリーズは確かに見た目に古びてしまったけれども,そもそも TeX の核は LaTeX2e になろうとも変わることがないので,記述は本質的に現在でも充分通用する。おまけに旧版の版形は新版の B5 変形版と比較すると A5 版であって,よりコンパクトなところが私の好みに合っていた。最新 LaTeX に照らして新参者が『八衢』シリーズに違和感を覚えるとしたら,\documentclass となることころが \documentstyle となっていることくらいではないだろうか。文字コードを直接指定するマクロ例があるけれども,これも upLaTeX では誤動作を引き起こしはしても(upTeX は内部 Unicode 化がなされているので),既存資産の継承にこだわって開発されている ptexlive なら,問題なく動作するはずである。そういうこともあり,私は新刊本をすぐ入手したいとはあんまり思っていない。後継の書籍がやっと出て,新しい読者にとって有益であることを確信するところである。

藤田先生の著書の特長は,もちろん何よりも,採り上げられたテーマの的確さ(超絶技巧よりも,出版文化に根ざした「使える」技術を目指しているところ)と,示された LaTeX マクロ・コード作法の巧とにある。でも,それだけではなくて,日本語の文章がじつにこなれていて,そこらへんのコンピュータ書籍を読んでいて感ずる理科系的独りよがりがまったくないところも,大いなる美点なのである。「年の功」などという失礼を口にしたくはないけれども,藤田先生の文章には若い技術者にない嗜みがある。

LaTeX のマクロを究めたい人に。私はロシアの LaTeX 関係の書籍もチェックしているけれども,この手の LaTeX マクロ本が脈々と出版される点で,日本の LaTeX 文化のレベルの高さを思い知るのである。
 


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ISAO YASUDA。システムエンジニア。神奈川県在住。昭和 30 年代を懐かしむオヤジ。ロシアに興味があります。
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